Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Tom Intondi

2007-04-30 | SSW
■Tom Intondi / House Of Water■

 大型連休に入って、昨日はいきなりの雷雨で驚きましたが、今日は一日いい晴天に恵まれました。 ニュースでは潮干狩りの映像なんかを流したりしています。
 もうすぐ 5月、海にでも出かけたくなるような季節に、こんなジャケットのアルバムを取り出して見ました。 ニューヨークのグリニッジビレッジを中心としたシンガーソングライター人脈に位置するTom Intondi が 1983 年に発表したセカンド・アルバムです。
 しかし、何度見てもダサい。 コンセプトもいまひとつ理解できないうえに、Tom Intondi の下着みたいな Tシャツ姿と意味不明の笑顔には、困惑するばかりです。 このジャケットでは衝動買いできません。

 このアルバムは Side-1 のことを、Side yang、Side-2 のことを Side yin と表記していますが、これは幼児語でしょうなのでしょうか? よく分かりません。
 さっそく、Side yang に針を落としてみましょう。 「Shoulder To The Wheel 」はゆったりしたミディアムバラード、ピアノのサポートが地味ながらも効いている曲です。 Tom Intondi に関しては存在を知った頃からフォーキーなサウンドを思い描いていたので、初めて聴いたときには意外だったことを覚えています。 続く「Who Comes Marchin'?」は、さらにハードな曲で、アルバムの評価にとってはマイナスポイント。「Twisting In The Wind」は一転して、ウッドベースとギターを基調とした素朴なナンバーに。 Tom Terreri の奏でるチェロも微妙に絡んできて、切ない心象風景を描き出しているかのようです。 いい曲です。 「High Times」は、また嗜好が変わって、モダンなニューヨークのナイト・ライフを表現したかのようなジャジーなナンバー。 ほとんどクラブでのライブ演奏かと思ってしまうほど、雰囲気を出すことには成功しています。

 Side yin はかなり粒ぞろいの曲が集まっていて、個人的には Side yang よりも好きです。「Dance With Me」は、メロウで憂いのあるメロディーと裏腹の♪Dance with me♪というメッセージに弱気な男の哀愁を感じとることができます。 タイトル曲の「House Of Water」は小気味よいコーラスと切れ味のあるサウンドがマッチした曲。 クオリティはかなり高いですね。 続く「You Call Me Home」はフォークロック調の曲ですが、カントリー色がまったくつかないのは、マンドリンやフィドルが登場しないだけではないと思います。 Tom Intondi の音楽性はあくまでも都市と暮らし、生活と人々という路地裏のコーヒースダンドから眺めた視線があるように感じるからです。 「Take Me To The Water」はさりげなさが際立つクールな曲。 ラストの「Then God Will Dance」も「House Of Water」に通じるサウンド。 終始一貫して、肩肘の張らないリラックス感と、気持ちのいいアレンジと演奏が Tom Intondi の魅力であることを再認識しました。 このアルバムが CD になることなど、ほぼありえないと思いますが、春先の心地よい午後には、こんなサウンドがお似合いですね。

 Tom Intondi は、このブログで以前取り上げたことのある Barbara Meislin のアルバムにコーラスで参加していますが、そのアルバムには、この「House Of Water」にも参加している Martha P. Hogan も参加していました。 時代も1年しか違わないので、比較的近い人脈のなかで生まれたアルバムなのかもしれません。 Tom Intondi はデビュー前の Suzanne Vega とも親交があったと言われますが、そんな彼の音源が収録されている CD を見つけることができました。 Fast Folk : A Community of Singers and Songwriters というコンピレーション盤です。 そこに収録されている音源は「High Times」でした。 この曲が彼自薦の代表作なのでしょうか。 ちょっとバイアスがかかってしまうなあと、余計な心配をしてしまいます。

 最後に宣伝を少し。 実は、ここ数年の良質な CD を紹介する別サイトを立ち上げています。 名前は「Till The Sun Turns Black」というのですが、こちらは全部 CD で入手できる作品というのがコンセプトですので、お気軽にお立ち寄りください。 

 

■Tom Intondi / House Of Water■

Side-1
Shoulder To The Wheel
Who Comes Marchin'?
Twisting In The Wind
High Times

Side-2
Dance With Me
House Of Water
You Call Me Home
Take Me To The Water
Then God Will Dance

All Songs written by Tom Intondi and Frank Rossi

Tom Intondi: Vocals, Acoustic Guitar
Frank Christian: Electric Guitar, Acoustic Guitar
Mark Dann: Bass Guitar, Electric Guitar, Twelve String Acoustic Guitar
Dan Hickey: Drums
Bernie Shanahan: Keyboards, Harmony Vocals
Bill Bachmann: Electric Guitar, Harmony Vocals
Jeff Hardy: Upright Bass
Chuck Hancock: Saxophone
Tom Terreri: Cello
Martha P. Hogan: Harmony Vocals
Helen Arrott: Eschatological Bombast
George Gerdes: Eschatological Bombast
David Massengill: Eschatological Bombast

City Dancer Records ti2001