Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Bill and Taffy

2007-04-07 | SSW
■Bill and Taffy / Pass It On■

 桜が満開になってから東京はやや寒い日が続いていますが、これから 5月まではとてもいい季節ですね。 そんな春のほんわかした気分にうってつけのアルバムをセレクトしてみました。 海辺で仲良く手をつないで幸せそうな、Bill とTaffy の Danoff 夫妻が 1973 年に発表したファーストアルバムです。 メジャーのRCAからのリリースですが、未だに CD 化される気配はありません。
 そんな Bill and Taffy は Fat City というバンドが解散し、主要メンバーだった 2人が結成したユニット。 彼らの名前を有名にしているのは John Denver の「Take Me Home , Country Road」(邦題:故郷へ帰りたい)を共作したという事実です。 この曲の作家としては Taffy Danoff ではなく Taffy Nivert という名前で登録されているので、当時はまだ結婚前だったということなのでしょう。

 アルバムはほぼ一貫して Bill と Taffy がハモり続ける感じで、その関係は、Gram Parsons の「GP」や「Grievous Angel」での Gram Parsons と Emmylou Harris の関係に通じるものがあります。 曲調はカントリー色の入ったポップがメインですが、ジャケットのように暖かな陽光や爽やかな風を感じる季節感ぴったりなサウンドです。 Larry Carton , Hal Braine , Jim Gordon やJoe Osborn などの著名なミュージシャンによるサポートもメジャーレーベルならではのもの。
 
 さて、アルバムをおさらいしてみましょう。 オープニングに相応しい伸びやかなナンバー「Flyin’ Home To Nashville」に続く「Do You Believe」はシングルカットできそうなキャッチーな出来です。 誤解を招きそうですが、キャプテン&テニールが歌ってもおかしくないです。 続く「Our Father」は、Taffy Danoff がソロをとるバラードですが以降の 2曲はリズムセクションが入っていないこともあり、やや散漫で退屈な出来と言わざるを得ません。
 B 面に移ると、ミディアムでレイジーな「She Won’t Let Me Fly Away」や軽快なロック「Roll Over」などで盛り返してきます。 フィドルやマンドリンを交えたカントリー「Some Sweet Day」では、Larry Carltonがバンジョーでクレジットされるという珍事が発生。 シェイクスピアの詩にメロディーを付けた「O Mistress Mine」は、質素な小曲ですがアルバムのお口直しみたいな存在でしょうか。 続く「Friends With You」は Bill and Taffy の音楽を 1曲で語るには最も適した曲。 適度なポップ感とメロウネスそして憂いなどが見事に融合しながらも盛り上がっていく様は、1970 年代前半にしか生まれないものです。 ちなみに、この曲には Al Jarreau が、ボーカル・フルートというクレジットで参加していますが、中間部でそれらしき歌声を聴かせています。 ラストの「Pass It On」も前曲の流れを受けついだ雄大で感動的なナンバー。 60 年代フォークの歌姫、Carolyn Hester がバックコーラスで参加しています。

 Bill and Taffy としてのアルバムは 1975 年に「Aces」がありますが、こちらは未聴です。 その後は、この「Aces」をきっかけに出会った Jon Carrollと Margot Chapman を加えた 4人編成のグループ「Starland Vocal Band」を結成し、1976 年から 1980 年にかけて、5 枚のオリジナルアルバムを発表しています。 このことは Bill Danoff の公式ページで知ったのですが、そこに掲載されている年老いた Bill Danoff の表情を見ると、34 年の歳月の重みを感じざるを得ませんでした。

 

■Bill and Taffy / Pass It On■

Side-1
Flyin’ Home To Nashville
Do You Believe
Our Father
Didn’t I Try
There’s Man In China

Side-2
She Won’t Let Me Fly Away
Roll Over
Some Sweet Day
O Mistress Mine
Friends With You
Pass It On

Produced by Dave Blume & Bill and Taffy Danoff
Arranged by Dave Blume

All Songs written by Bill Danoff
Except ‘Flyin’ Home To Nashville’ , ‘Friends With You’ and ‘Pass It On’ written by Bill and Taffy Danoff , ‘O Mistress Mine’ words and music by Bill Danoff and William Shakespeare

Keyboards : Larry Muhoberac
Bass : Joe Osborn , Jamie Faunt
Drums : Hal Blaine , Jim Gordon
Guitar : Bill Danoff , Bob Rose , Larry Carlton
Korean Flute : Raymond Cho
Koto : Kayoko Wakita
Tsi-idoati : Elisabeth Waldo
Background Vocal :Carolyn Hester
Fiddle and Mandolin : Nyron Berline
Banjo : Larry Carlton
Vocal Flutes : Al Jarreau

RCA APL1-0214