齋藤孝著、『質問力 話し上手はここがちがう』は中田敦彦のYouTube大学の動画で紹介されていた本です。動画では主に中田敦彦の話芸を楽しみ、紹介本は「ネタ」という感じですが、このテーマは興味があるので、もっと詳細に読んでみたいと思って本を買って読んでみました。
目次
プロローグ
第1章 「質問力」を技化する
第2章 いい質問とは何か?―座標軸を使って
第3章 コミュニケーションの秘訣―①沿う技
第4章 コミュニケーションの秘訣―②ずらす技
第5章 クリエイティブな「質問力」
エピローグ
この著者のスタンスは、「話し上手とは聞き上手のことである」という考え方をもっと具体的に「質問力こそがコミュニケーション力のカギ」だというところにあります。
つまり、ただ相槌をうって聞いていれば聞き上手というわけではなく、相手からいい話・深い話を引き出す質問をすること、ひいては相手が自分で気が付いていなかったようなことを質問によって気づかせ、インスピレーションを与えることができるのが目指すべき理想的な聞き上手(質問上手)だということです。こうした質問するという積極的な行為によってコミュニケーションを自ら深めていく能力がコミュニケーション力の神髄であるから、本書はそのための提言という位置づけです。
この大前提のもとに、ではどういう質問が「いい質問」なのか、第2章でいくつかの座標軸を使って説明します。例えば「具体的―抽象的」の縦軸と「本質的―非本質的」の横軸で作る座標軸では、「具体的+本質的」のところがストライクゾーン、「具体的+非本質的」のところは「普段何をしていますか」的なスモールトークゾーン。「抽象的+本質的」な質問は答えにくく、タイミングが悪ければまったく歓迎されないもの。「抽象的+非本質的」が最悪のパターンで、どうでもいいことを抽象的に聞くこと。そして、この最悪パターンの質問をする人が実は一番多く、職業としてインタビュアーをやっている人にも少なくなく、質の悪いインタビューを量産していると、著者はどうやらご立腹のような印象を受けます。
他に3つの座標が提示されています。
- 縦軸「自分が聞きたいー聞きたくない」、横軸「相手が話したい、答えたいー相手は話したくない、答えたくない」
- 縦軸「現在の文脈にあっているーいない」、横軸「相手の経験世界、過去の文脈に沿っているー沿っていない」
- 縦軸「自分が知りたいー知りたくない」、横軸「読者・他の聴衆が知りたいー知りたくない」
この座標軸を使った分析で、おべっか・気配り・大人ゾーン(自分は聞きたくない+相手が話したい)、や相手の知識や状況を考えずに何でもどうしてどうしてと聞くような子どもゾーン(自分が聞きたい+相手は答えたくない)などが浮き彫りになるところが非常に秀逸です。
これらの座標軸を質問の質を見極める指標として、3章4章で具体例を見ていきます。
そして最後の章で、究極の質問というべき、クリエイティブな質問、相手に考えるインスパイアを与える質問とはどういうものかを具体例を挙げてみていきます。
共通して言えるのは、相手のことをよく勉強・観察し、その人しか語れないようなことは何か、今の文脈で重要なポイントは何かを考えてから質問するということだと思います。
細かい聞く技法としては、たとえば相手の言葉を引用して繰り返すことで共通の基盤を築いたり、相手の言葉を自分の言葉で言い換えて「きちんと聞いて理解している」ということを示し、相手の信頼を得たりするのが基本形で、そこから微妙にずらして、第三者の視点を入れてみたり、比喩を使ってみたりして話を発展させていくのが応用編という感じでしょうか。具体例が紹介されているので、分かりやすく、かなり親切な本だと思います。