【マルチパン】
「マルチパン」は、スペインのトレドやラ・リオハ、ドイツのリューベックやシチリアのパレルモの名物として知られる洋菓子である。砂糖とアーモンドを挽いて練り合わせた、飴のような食感のある菓子で、独特の風味がある。
本来のスペイン語により近い読みは「マサパン」である。ドイツ語で゛は「マルツィパン」という。イタリアでは「マルツァパーネ」または「パスタ・レアーレ」という。
フランス語では「マスパン」または「パトダマン」、英語では「マージパン」、ポルトガル語では「マサパン」という。日本ではドイツ語読みが由来の「マルチパン」と英語読みが由来の「マジパン」の両方が普及している。現在のところ後者の方が主流である。
『歴史』
「マルチパン」は中世にアーモンドと砂糖が手に入りやすくなった中東で発明されたようである。10世紀のアッパース朝時代には、アーモンドを挽いてシロップに加えて煮詰め、色々な形に成形した。
ロージナージュ・ヤビースという菓子があり、ハルヴァーの一種として親しまれていたる
ヨーロッパににはトルコ人によって東ヨーロッパ経由でドイツのバルト海沿岸に伝わったルートと、南からアルダス(イベリア半島)やシチリアに伝わったルートの2つが考えられる。中世ヨーロッパでは、貴族の宴会で「マルチパン」が食べられていた。
ドイツでは1407年にリューベックか゛飢餓に陥った際、市参事会がパン職人に、市の倉庫に大量に眠っているアーモンドを使って食べる物を作って欲しいと依頼し創らせたのが起源と伝えられている。現在では市庁舎近くのカフェ・ニーダーエッガーが「マルチパン」の店としてドイツ全土にその名を轟かせている。
シチリアでは、マルトラーナ教会の修道院で、教会を復活祭の祈りに訪問した大司教を驚かせるために果物そっくりの形をした「マルチパン」が発明されたと言われている。
この他、スペインのトレドやポルトガルのアルカルヴェ地方も「マルチパン」で有名である。
『形と文化』
「マルチパン」は様々な形に造形して着色した、一口大のものが一般的である。果物や野菜の形をしたものが多く、そのほかにも動物や人物など、色々なものがある。鮮やかに着色されているので、店先では菓子というよりままごと遊びの玩具のように見える。
モーツアルトクーゲルのようなチョコレートやシュトレンの中の詰め物に使ったり、薄く伸ばしてアイシングやクリームの代わりにケーキのデコレーションに使うこともある。ドイツの伝統的なウェディングケーキやクリスマスケーキはこの「マルチパン」を使ったデコレーションケーキが使われる。
ドイツでは祝い品として使われることも多く、有名なのは紙製の金貨をくわえた豚をかたどった「グリュックシュヴァイン」(幸福の豚)である。オーストリアやドイツの一部の地域などでは大晦日にこれを贈りあう習慣がある。
【パンドーロ】
「パンドーロ」は、イタリアのヴェローナの銘菓である。バネットーネと共にクリスマス特有の菓子の一つである。
『概要』
一説によるとによると、元々の製法はオーストリアで研究され、そこで「ウイーンのパン」と呼ばれていたものに由来すると言われている。他の説では、逆に、裕福なヴェネツィア人のテーブルに供されていた「パーネ・デ・オーロ(黄金のパン)」に由来するのだろうと言われている。
生地は軟らかく、玉子由来の黄金色で、バニラの香りである。形状は先端のない円錐形で星型にえぐられていて、通常は8つの頂点がある。
材料は、小麦粉、砂糖、卵、バター、カカオバター、酵母である。
作製技術は特に複雑で、多数の作業工程を経て作られる。
ちなみにドライフルーツが入るものは「パネットーネ」と呼ばれるが、ひちらはミラノの銘菓である。