【ナチョス】
「ナチョス」は、通例溶かしたチーズをかけたトルティーヤ・チップスをベースとするテクス・メクス料理を指す。単数形のナチョとも呼ばれる。
一般的なトッピングの例としては、牛肉や鶏肉の挽肉、チリコンカーン、ハラペーニョのスライス、フリホレス・レフリトス、サルサ、サワークリームなどがある。まれにチーズを使用せずに作ることもある。
『概要』
ナチョスは1943年にメキシコのコアウイラ州ピエドラス・ネグラスのレストランで働いていたイグナシオ・アナヤによって創り出されたとしているるリオ・クランで川の対岸にあるテキサス州イーグルパスからピエドラス・ネグラスに買い物に訪れた12人のアメリカ合衆国の航空兵の夫人達が昼食時にルドルフォ・デ・ロス・サントスの経営するレストラン「ザ・ブィクトリー・クラブ」を訪れた。調理師が不在だったため、「ナチョ」の愛称で知られるウェイター長だったアナヤが手早く揚げたトルティーヤをとろけるウィスコンシンチーズとハラペーニョで覆った軽食を用意し、飲み物と共に供した。
それが思いがけず人気を博したためにその後正式メニューにも加えられたとう。当初彼が考案したこの新しい料理の名前は、「ナチョス・エスペシアレス」であった。1954年にイーグル・パスで印刷された広告には、「元祖ナチョ・スペシャルの店」という記述がある。
後に水素添加した植物油をチーズに加えたチーズソースが発明され、工場製のトルティーヤ・チップスを使用するようになつて準備が簡単になったナチョスは映画館や競技場などの売店のメニューとして徐々に人気を博していった。
このチーズソースはトルティーヤ・チップスの上にかけるものであるが、チーズのディップとしてそのままつけて食べるために使用されることがよくある。しかし、チーズソースは本格的なメキシコ料理でも伝統的なテクス・メクス料理でもなく、トランス脂肪酸を含むために健康にあまり良くないと考えられて以来、再び固形のチーズを用いたナチョスが人気を博するようになった。
『調理』
普通ナチョスは耐熱皿または天板にトルティーヤ・チップスを敷き、その上をおろしたチェダーチーズまたはモンテレージャックチーズで覆い、上記のようなトッピングを加え、オーブンか電子レンジでチーズが溶けるまで加熱して作るが、レストランではチーズソースまたはチリコンケソを小さなさコップに入れて、トルティーヤ・チップスとは別に供することもある。ナチョスはサワークリームやサルサと一緒に供されるのが最も一般的であるが、ワカモレのような他のディップと一緒に出されることも多い。
【ブリート】
「ブリート」は、小麦粉で作られたトルティーヤに具材を乗せて巻いたメキシコ料理、テクス・メクス料理およびアメリカ料理。
『概要』
メキシコ北部と隣接するアメリカ合衆国南西部では、単品の具を巻くのが一般的である。アメリカ合衆国の他の地域では、米、インゲン豆、レタス、トマト、サルサ、ワカモレ、チーズ、サワークリームなどをたっぷりと入れて巻いた、一つで十分食事になるぐらい大きなブリートが一般的である。具を巻く前に小麦粉のトルティーヤを柔らかくするため、軽く火で炙ったり蒸したりすることもある。
「ブリート」はスペイン語で「小さなロバ」を意味する。理由は細く巻いたトルティーヤがロバの耳に似ているからとも、ロバが背中に積んでいた毛布や荷物に似ているからとも言われている。
『メキシコのブリート』
「ブリート」はチワワ州シウダー・フアレスの伝統料理で、レストランや屋台で買って食べることができる。シウダー・フアレスには開店以来数十年になるブリートの老舗が幾つかある。
ブリートは朝昼晩いつでも食べられる。よく用いられる具には、バルバコア(じっくりと焼いた牛肉のバーベキュー)、モーレ、ウイニース(ソーセージを刻んでトマトとチレのソースで煮たもの)、フリホレス・レフリストとチーズ、デシェブラダ(牛の脇腹の肉をじっくりと焼いてほぐしたもの)、チレ・レイェーニヨ(チレにチーズなどを詰め、衣をつけて揚げたもの)、などがある。
チシェブラダのブリートには、甘口から中辛の「チレ・コロラド」、風味と激辛のサルサ・ベルデ風味がある。
テキサス州南部やニューメキシコ州南部のブリートもこれと同様で、ブリートを専門とする飲食店で食べる他、ほとんどのガソリンスタンドで手作りのブリートを売っている。
ブリートはメキシコ中央部と南部ではタコ・デ・アリナ「小麦粉のタコの意」、北部風レストランでは女性形の「ブリータ」と(雌ロバ)と呼ばれている。ソノラ州とその周辺には、ブリートを油で揚げた「チヒチャンガ」という料理がある。ブリートはメキシコ北部以南ではあまり知られていなかったが、アメリカやカナダからの観光客の流入や、アングロアメリカから帰還したメキシコ人が増えたため、あまり伝統に固執しない飲食店では食べられるようになってきている。
『アメリカ合衆国のブリート』
アメリカ合衆国で最も有名なブリートは具が多い大型のブリートで、メキシコではなく米国で生まれたと考えられている。よく見られるブリートのバリエーションのひとつに、ブリートにエンチラーダ風のソースをかけ、とろけるチーズをおろしてかけたウェット・ブリートがあり、タコベルではエンチリートという名で売られている。メキシコ料理店やテクス・メクス料理店では、とろけたチーズに覆われたブリートを特に「ブリート・スイソ(料理用語ではチーズやクリームをかけた料理)と呼ぶ。
タコベルのブリートの形はメキシコのものに近いが、中身は米国風である。
アメリカ合衆国には、独特のブリートで有名な都市がいくつかある。中でも有名なのはサンフランシスコ風ブリートである。