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菊池寛『真珠夫人』その2

2014-05-15 08:53:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 父が言うには、相手は45歳で先妻の子が2人あるが、支度金は30万円まで出すとのことだった。先日園遊会を主催した勝平なのだという。瑠璃子は男の執拗な目つきを思い出し、ゾッとした。やがて父の債権を勝平に譲渡したという通知が次々に舞い込んできた。それは総額20万円にもなった。そして面会を求める勝平からの手紙が届き、瑠璃子の父は勝平に会うことにした。やって来た勝平は瑠璃子の父を崇拝していると言い、縁談の相手は25歳になる自分の息子で、結婚していただけたら、債務は帳消しにすると言う。瑠璃子の父は娘を金で売るほど落ちぶれていないと言い、勝平を追い返したが、勝平は好意とともに悪意も持っていると言って去っていった。
 やがて最初の債権の期日が迫ってきた。瑠璃子の父は金策に走ったが、3万という大金を用意することはできなかった。期日まであと2日という時、父の政治上の子分ともいうべき木下がやって来た。彼は掛け軸の鑑定を父に頼み、それを父に預けて帰っていった。父が何気なくそれを見ると、それは生涯初めて見る逸品で、10万円は下らないものだった。父はすぐに木下へ返すと言って、その掛け軸を持って家を出た。父はその夜遅く、酒気を帯びて帰宅した。期日の日、金を受取に来た勝平の使いに対し、父は百円札の束を手にしていた。
 それから1ヶ月ほどして、父は警視総監に呼び出された。帰宅した父の顔は蒼ざめていた。その夜、父は自室に立てこもったが、扉の外で叫ぶ瑠璃子の声で自殺を思いとどまった。父によると、掛け軸は勝平の物で、勝平は横領の告訴を出しているのだという。勝平は瑠璃子の父が自分のところへ来て手をついて謝るのなら、告訴を取り下げてもいいと言っているのだと聞いた瑠璃子は、本当の正義を勝平に知らしめてやるために、自分が勝平に嫁入りすると言った。
 勝平は木下に、瑠璃子の相手は自分の長男で白痴の勝彦だと言ってきたと話した。そこへ杉野子爵がやって来て、父に対する告訴を取り下げてくれれば、瑠璃子が勝平の妻になると言ってきていることを伝えた。それを聞いた勝平は哄笑し、一方、瑠璃子の恋人・杉野直也は今回のあらましが書いてある瑠璃子からの手紙を読んでいた。直也は勝平を訪ね、良心がないのか?と問うたが、勝平は良心などないと笑うのだった。直也は思わずポケットから拳銃を取り出したが、杉野子爵がそれに取りつき、その弾みで拳銃が発射され、銃弾が勝平の娘、美奈子を傷つけた。勝平はすぐ警察に通報するように言ったが、美奈子は自分のために直也が牢に行くようなら自分は生きていないと言って、父の行動を止め、直也は感激の涙を流すのだった。
 勝平と瑠璃子の結婚式は盛大に行なわれたが、瑠璃子の父が貧血を起こして倒れると、出席者は皆急いで帰って行った。帰宅した勝平は瑠璃子の父の15万円近くの証書を瑠璃子に渡すと、瑠璃子はそれをその場で焼いてしまった。そして自宅に電話すると、父の容態が急変したと言って、勝平の許しを得て、自宅に帰って行った。
 勝平はその後、毎日、唐沢の家を訪ね、瑠璃子に贈物を置いて帰った。瑠璃子はいつまでも勝平から逃げててはいけないと思い、ある日、勝平とともに勝平の家に戻った。その途上、勝平ははずみで美奈子の姉になってやってくれと言ってしまい、瑠璃子はその言葉を受けて、勝平をお父さんと呼び、体を預け、勝平は意も無くそれに同意するのだった。やがて瑠璃子の魅力に抗しきれなくなった勝平は瑠璃子の寝室に押し入ろうとしたが、扉の前には勝彦が立っていた。勝彦は瑠璃子会いたさに毎晩扉を守っていると言い、それは瑠璃子も承知しているのだと言った。それでも勝平は無理矢理部屋に入ろうとしたが、美奈子が出てきて父を止めた。日中も瑠璃子は勝彦と親し気にし、勝平は憤激した。ある日、瑠璃子は三越に行きたいと言い出し、勝平が仕事で一緒に行けないと知ると、勝彦と行きたいと言った。苦りきる勝平。(また明日へ続きます‥‥)

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