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谷崎潤一郎『恐怖時代』

2011-05-26 08:42:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎の1916年作品『恐怖時代』を読みました。二幕ものの戯曲です。
 江戸時代の太守の愛人であるお銀の方は、召使いの梅野と家老の靱負と図って、妊娠している太守の奥方を毒殺し、靱負との間に8年前にできた照千代を担いで家を乗っ取ろうと画策します。お銀の方に思いを寄せ、過去に肉体関係にもあった医者の玄澤に二百両と交換で毒薬を用意させ、玄澤にはその毒を靱負に盛ると話して油断させ、お銀の方は玄澤を毒殺します。お銀の方らは腰元のお由良の父であり、茶坊主である珍齋を脅して、太守の奥方に毒を盛らせることに決めますが、お由良が父にお銀の方らの陰謀を暴露し、太守に密告するつもりであることを語るのを盗み聞きした梅野は、その場でお由良を惨殺します。娘の死を目の当たりにした珍齋は、お銀の方らに命乞いをし、お銀の方らの計画通りに、太守の奥方に毒を盛ることを承知します。翌日、小姓の伊織之介はお銀の方と梅野に会い、彼らの計画の邪魔をしようとしている二人の武士、氏家と菅沼に伊織之介が御前試合をしかけ、二人を亡き者にする計画を立てます。梅野に対しては計画の成功後に結婚する約束をする伊織之介でしたが、梅野が去ると、靱負を殺してお銀の方と一緒に家を乗っ取る計画を話し合います。そこへ太守の酒宴に氏家と菅沼が乱入し、太守を取り押さえているという一報が入ります。氏家と菅沼は、太守の昼夜を問わない歌舞宴会に加え、一時の酒興に太守が罪なき者を毎日のように成敗することを責めて、太守を堕落させているお銀の方の命を申し受けたいと太守に言い、それが聞き入れなければ太守の命を申し受けて自ら切腹すると言いますが、それを聞いた太守は、お銀の方の命を守るためなら自分は死んでもいいと言い出し、氏家と菅沼を戸惑わせます。そこに現れたお銀の方も、殺せるものなら自分を殺せと言い、太守の許しなくお銀の方を殺す訳にいかない二人は、追いつめられた結果、腹を括ってお銀の方に斬りかかります。そこへ現れた伊織之介が二人に御前試合を申し込み、太守にそれを認められた伊織之介は、その場で二人に致命傷を与えます。血みどろの二人を見て興奮した太守は、伊織之介に武芸のたしなみのある梅野とも真剣勝負をしてみろと言い、後に引けなくなった伊織之介は梅野の頭の皮を切り落とした後、惨殺します。そこへ奥方が毒を盛られた知らせが入り、珍齋に嫌疑がかかり、靱負が彼の取り調べをかってでます。二人になった伊織之介とお銀の方の密談を盗み聞いた靱負は、自分が騙されていたことを知りますが、逆に伊織之介によって斬殺されます。太守は珍齋の自白により、お銀の方らの陰謀を全て知りますが、伊織之介はそんな太守を斬って捨て、ついに極まった伊織之介とお銀の方は太守の死体の上で自殺し、後には気絶した珍齋ばかりが残されるのでした。
 血で血を洗う愛憎劇で、その荒唐無稽さはある種、サドの小説をも思わせるものでした。当時は発禁処分にされた作品でもあります。谷崎の隠れた名作なのではないでしょうか。

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鈴木則文監督『恐怖女子高校 女暴力教室』

2011-05-25 08:27:00 | ノンジャンル
 鈴木則文監督・共同脚本の'72年作品『恐怖女子高校 女暴力教室』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 立派な目標が掲げられた「聖光女子学園」の看板から、鉄格子の窓に移り、真っ赤な字でタイトル。乱れきった教室内ではバイブでよがる者もいれば、シンナーを吸う者もいます。放課後トイレで私服に着替えて化粧をしたお道(杉本美樹)らは、別の女子高グループに因縁をつけられ、路上で乱闘に至り、相手から財布とパンティを取り上げます。生徒に暴力を振るったとして前校をクビになった吉岡が新たにお道の組の担任になりますが、教室のドアを開けると猫の死骸がぶらさがり、黒板に書き始めると、パンティやコンドームが飛んで来ます。厳しい態度で臨むと宣言する吉岡に対し、お道はここには私たちのルールがあるんだと言い放ちます。理事長の娘・すみ子が同級生からかつあげをしているのを見つけたお道らは、すみ子の仲間らと乱闘となり、すみ子らをトイレに閉じ込め、火のついた竹箒をかざして火の粉を降らせます。酒を飲んで家に帰って来たお道を公務員の父は叱りますが、お道は自分が強姦されたことを隠蔽しようとする家族を責め立て、その事件以来不良になったことが明らかになります。花園のお由紀として有名なスケ番(池玲子)が転校してくることになり、その噂をお道らがしていると、お由紀がピアノで弾く「皆殺しの歌」が聞こえて来ます。ピアノを弾くお由紀にお道らは殴りかかり倒すと、去って行きますが、優等生の洋子はお道に同情し、自宅に連れて帰ります。理事長(金子信雄)の長男・たけお(名和広)はバーで働く洋子に執心し、酔わせた彼女を車内で犯します。すみ子が仲間に売春させ、それで得た資金でスケ番連合を作ろうとしているという情報を得たお道は、仲間にその証拠をつかませに行かせますが、逆に仲間を人質に取られ、彼らを奪還するために、すみ子らの元に赴き、乱闘となります。吉岡がそこに駆けつけ、残っていたお道らを次々に投げ飛ばすと、お道は見直したと言って、吉岡を喫茶店に誘いますが、照明を消した後吉岡をめった打ちにします。吉岡は卑怯なまねをするなと教室でお道らにビンタを喰らわせますが、お道らは吉岡を捕えて、彼の目の前で吉岡の味方の女教師を仲間に輪姦させます。そこに駆けつけたお由紀はお道に仁義を切ると、お道も切り返し、ビーナスブリッジでのタイマン勝負となりますが、引き分けに終わります。その場に落ちていた学生証から、お道はお由紀がたておらの高利貸しが原因で一家心中した家族の生き残りであることを知ります。医科大学新設のために教育委員長に洋子を抱かせたたけおでしたが、洋子の妊娠が発覚すると、彼女に中絶を迫り、すみ子らは洋子に暴力を振るい流産させます。お由紀の目の前で洋子は飛び降り自殺し、その現場にいたお道らに理事長とたけおは口止めさせようとします。すみ子からケンカ状を受けたお道らは、彼女らとの河川敷での乱闘に臨みますが、すみ子らが約束を破ってナイフを取り出すと、そこへライフルを持ったお由紀が現れ、全ての張本人がたけおであることをすみ子に白状させると、彼女らを全裸にさせ天国の洋子に対して土下座させます。たけおの誘いに乗ってベッドを共にしたお由紀でしたが、たけおは彼女の内股に彫られた刺青に気付き、彼女が自分が復讐のためにこの学校に転校してきたことを明らかにすると、そこへライフルを持ったお道らが乱入します。彼女らはたけおに父の情婦を抱かせた後、校門に理事長と情婦とたけおを縛り付け、彼らの不正を暴く立て看板を立てると、制服を脱いで校門の前で燃やすのでした。
 突然ハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』になったり、ライフルを持って池玲子が現れる辺りから荒唐無稽さが加速するなど、見どころ満載でした。コメディリリーフも由利徹や岡八郎、大泉滉ら芸達者が揃い、楽しませてくれました。オススメです。

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トゥーキュディーデース『戦史(上)』

2011-05-24 08:55:00 | ノンジャンル
 本日はロバート・キャパの命日です。彼は史上初の戦場カメラマンとして、第二次世界大戦からベトナム戦争まで、死地をかいくぐって撮影し、特にノルマンディ上陸作戦を唯一撮った写真家として有名でしたが、戦火の間でくつろぐ兵士の姿の写真なども印象的でした。現在は弟さんがニューヨークに写真博物館を開いていて、私も訪れたことがあります。改めてご冥福をお祈りいたします。

 さて、ジャレド・ダイヤモンドが推薦していた、トゥーキュディーデースの『戦史(上)』を読みました。紀元前431年から27年の長きにわたってギシリア全土を混乱に巻き込んだペロポネーソス戦争の経過を、同時代人である著者が描いた本です。
 エピダムノスをめぐるケルキユーラとコリントスの紛争の描写から始まり、ケルキューラ、コリントス両国使節がアテーナイに来ての演説、アテーナイ人がケルキューラと結ぶ同盟、ケルッキューラ沖海戦、ポテイダイアの変、ラケダイモーンにおけるペロポネーソス同盟非公式会議開催、アテーナイ興隆の歴史、ラケーダイモーンにおけるペロポネーソス同盟公式会議、ラケダイモーン、アテーナイ両国間の外交的な前哨戦、ペリクレースの演説というように、次々と細かい描写が続いていきます。
 この時代にこれだけの情報を得ることは至難の技だったと思えます。それほど詳細に渡って史実が記載されていることに驚きました。当時の歴史書を読んでみたい方にはオススメです。

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青池憲司監督『ベンポスタ・子ども共和国』

2011-05-23 00:05:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが著書『山田宏一の日本映画誌』の中で絶賛していた、青池憲司監督の'93年作品『ベンポスタ・子ども共和国』をビデオで見ました。
 鳥のさえずりが聞こえる中、早朝の施設の風景が映されます。スペインにシルバ神父によって作られたベンポスタ・子ども共和国では、市民生活大臣が朝、子供たちを起こして回ります。「100人の子どもと40人の大人が共同生活している」とナレーション。シャワーを浴びる子どもたち。「学校と労働とサーカスの練習から成る生活」とナレーション。公立学校と同じ授業風景ですが、「一日5時間を超える授業は禁止され、8年級は5段階に」とナレーション。午後1時間の職業訓練を兼ねた労働。自主的な組織運営。土と親しむための畑作り。サーカスの練習風景。市長、市民生活大臣へのインタビュー。アイスを食べ合ったり、犬で遊ぶ子どもたち。日本から来た2人の少女を市長や神父は歓迎し、住民総会で彼らは受け入れられます。民主的な行政・経済組織の説明をする経済大臣は、通貨コロナを紹介し、年間収入の70%がサーカスによるものだとナレーション。生協から運ばれて来る食糧。調理や食事の風景。神父へのインタビュー。山の修道院で修行する大人たち。最高学年での社会の授業は、報道記事などを使って行われます。放送局の様子。サーカスの練習風景。恋人たちの様子。農業の先生へのインタビュー。そりで遊ぶ子どもたち。犬のアンディが病気で死に、犬について住民総会で話し合われます。公演の日程が決まり、本格的なサーカスの練習が始まります。日曜のミサの様子。衣装作り。インタビュー中吹き出す少女。将来のため、神学校で勉強する市長。コロンビアにベンポスタを作った者の報告会。そして最後、サーカスの公演が行われ、公演の最後に世界平和が祈られ、出演者と観客が次々と握手して、映画は終わります。
 楽しそうに毎日を送る子どもたちの様子が活写されていました。面白いドキュメンタリーとしてオススメです。

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内田樹・鈴木晶『大人は愉しい』

2011-05-22 07:51:00 | ノンジャンル
 俳優の長門裕之さんの訃報が今朝の新聞に載っていました。私にとっての長門さんはマキノ雅弘監督作品での印象が強く、『日本侠客伝』シリーズや『日本残侠伝』『昭和残侠伝・死んで貰います』、そして『色ごと師春団治』などでの粋な兄さん役が鮮明に記憶に残っています。ご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、内田樹さんと鈴木晶さんの'02年の共著『大人は愉しい』を読みました。ネット上で公開しながら二人の間で交換されたメールを集めて作られた本です。
 読んでいてなるほどと思ったのは、インターネットで発信することの余得は、そうでもしなければ誰も聞いてくれないはずのとりとめのない「思い」を受信し、耳を傾けてくれる誰かがいるという期待のせいで、何だか生きている「張りが出て」くるということ、ウェブ日記を書くメカニズムというのは、ごく単純に図式化すると、ここには少なくとも三種類の「私」が混在していて、ひとりは「現に生きている第一の私」、次に「『第一の私」の言動や思考や感情のうちの一部を選択的に記述や分析の対象として日記に書いている第二の私」、次に「それを読者の眼で読んでいる第三の私」があり、ウェブ日記の最終的なヴァージョンはこの「第三の私」のチェックを受けて、「読者のニーズを繰り込みつつパッケージされた状態」になったものであるということ、母親に商人された子どもは「異常なくらい楽天的」になれるということ、英語でもフランス語でも、夫婦はファミリーとはいわず、子ができてはじめてファミリーになるということ、子どもは自分のやりたいことを見つけるよりは、「やりたくないこと」を次々消去していって、残ったものをやるほうが楽であるということ、日本が植民地主義的・帝国主義的な「権力」をふるった以上、その「つけ」はそれと同じ「権力の貨幣」で支払われる他なく、経済的な賠償や、友好関係や対話的関係の成立によっては、この「つけ」は償却できないということ、などでした。
 気軽に一気に読める本です。内田さんの本をまだ読んだことのない方には特にオススメです。

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