谷崎潤一郎の1916年作品『恐怖時代』を読みました。二幕ものの戯曲です。
江戸時代の太守の愛人であるお銀の方は、召使いの梅野と家老の靱負と図って、妊娠している太守の奥方を毒殺し、靱負との間に8年前にできた照千代を担いで家を乗っ取ろうと画策します。お銀の方に思いを寄せ、過去に肉体関係にもあった医者の玄澤に二百両と交換で毒薬を用意させ、玄澤にはその毒を靱負に盛ると話して油断させ、お銀の方は玄澤を毒殺します。お銀の方らは腰元のお由良の父であり、茶坊主である珍齋を脅して、太守の奥方に毒を盛らせることに決めますが、お由良が父にお銀の方らの陰謀を暴露し、太守に密告するつもりであることを語るのを盗み聞きした梅野は、その場でお由良を惨殺します。娘の死を目の当たりにした珍齋は、お銀の方らに命乞いをし、お銀の方らの計画通りに、太守の奥方に毒を盛ることを承知します。翌日、小姓の伊織之介はお銀の方と梅野に会い、彼らの計画の邪魔をしようとしている二人の武士、氏家と菅沼に伊織之介が御前試合をしかけ、二人を亡き者にする計画を立てます。梅野に対しては計画の成功後に結婚する約束をする伊織之介でしたが、梅野が去ると、靱負を殺してお銀の方と一緒に家を乗っ取る計画を話し合います。そこへ太守の酒宴に氏家と菅沼が乱入し、太守を取り押さえているという一報が入ります。氏家と菅沼は、太守の昼夜を問わない歌舞宴会に加え、一時の酒興に太守が罪なき者を毎日のように成敗することを責めて、太守を堕落させているお銀の方の命を申し受けたいと太守に言い、それが聞き入れなければ太守の命を申し受けて自ら切腹すると言いますが、それを聞いた太守は、お銀の方の命を守るためなら自分は死んでもいいと言い出し、氏家と菅沼を戸惑わせます。そこに現れたお銀の方も、殺せるものなら自分を殺せと言い、太守の許しなくお銀の方を殺す訳にいかない二人は、追いつめられた結果、腹を括ってお銀の方に斬りかかります。そこへ現れた伊織之介が二人に御前試合を申し込み、太守にそれを認められた伊織之介は、その場で二人に致命傷を与えます。血みどろの二人を見て興奮した太守は、伊織之介に武芸のたしなみのある梅野とも真剣勝負をしてみろと言い、後に引けなくなった伊織之介は梅野の頭の皮を切り落とした後、惨殺します。そこへ奥方が毒を盛られた知らせが入り、珍齋に嫌疑がかかり、靱負が彼の取り調べをかってでます。二人になった伊織之介とお銀の方の密談を盗み聞いた靱負は、自分が騙されていたことを知りますが、逆に伊織之介によって斬殺されます。太守は珍齋の自白により、お銀の方らの陰謀を全て知りますが、伊織之介はそんな太守を斬って捨て、ついに極まった伊織之介とお銀の方は太守の死体の上で自殺し、後には気絶した珍齋ばかりが残されるのでした。
血で血を洗う愛憎劇で、その荒唐無稽さはある種、サドの小説をも思わせるものでした。当時は発禁処分にされた作品でもあります。谷崎の隠れた名作なのではないでしょうか。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
江戸時代の太守の愛人であるお銀の方は、召使いの梅野と家老の靱負と図って、妊娠している太守の奥方を毒殺し、靱負との間に8年前にできた照千代を担いで家を乗っ取ろうと画策します。お銀の方に思いを寄せ、過去に肉体関係にもあった医者の玄澤に二百両と交換で毒薬を用意させ、玄澤にはその毒を靱負に盛ると話して油断させ、お銀の方は玄澤を毒殺します。お銀の方らは腰元のお由良の父であり、茶坊主である珍齋を脅して、太守の奥方に毒を盛らせることに決めますが、お由良が父にお銀の方らの陰謀を暴露し、太守に密告するつもりであることを語るのを盗み聞きした梅野は、その場でお由良を惨殺します。娘の死を目の当たりにした珍齋は、お銀の方らに命乞いをし、お銀の方らの計画通りに、太守の奥方に毒を盛ることを承知します。翌日、小姓の伊織之介はお銀の方と梅野に会い、彼らの計画の邪魔をしようとしている二人の武士、氏家と菅沼に伊織之介が御前試合をしかけ、二人を亡き者にする計画を立てます。梅野に対しては計画の成功後に結婚する約束をする伊織之介でしたが、梅野が去ると、靱負を殺してお銀の方と一緒に家を乗っ取る計画を話し合います。そこへ太守の酒宴に氏家と菅沼が乱入し、太守を取り押さえているという一報が入ります。氏家と菅沼は、太守の昼夜を問わない歌舞宴会に加え、一時の酒興に太守が罪なき者を毎日のように成敗することを責めて、太守を堕落させているお銀の方の命を申し受けたいと太守に言い、それが聞き入れなければ太守の命を申し受けて自ら切腹すると言いますが、それを聞いた太守は、お銀の方の命を守るためなら自分は死んでもいいと言い出し、氏家と菅沼を戸惑わせます。そこに現れたお銀の方も、殺せるものなら自分を殺せと言い、太守の許しなくお銀の方を殺す訳にいかない二人は、追いつめられた結果、腹を括ってお銀の方に斬りかかります。そこへ現れた伊織之介が二人に御前試合を申し込み、太守にそれを認められた伊織之介は、その場で二人に致命傷を与えます。血みどろの二人を見て興奮した太守は、伊織之介に武芸のたしなみのある梅野とも真剣勝負をしてみろと言い、後に引けなくなった伊織之介は梅野の頭の皮を切り落とした後、惨殺します。そこへ奥方が毒を盛られた知らせが入り、珍齋に嫌疑がかかり、靱負が彼の取り調べをかってでます。二人になった伊織之介とお銀の方の密談を盗み聞いた靱負は、自分が騙されていたことを知りますが、逆に伊織之介によって斬殺されます。太守は珍齋の自白により、お銀の方らの陰謀を全て知りますが、伊織之介はそんな太守を斬って捨て、ついに極まった伊織之介とお銀の方は太守の死体の上で自殺し、後には気絶した珍齋ばかりが残されるのでした。
血で血を洗う愛憎劇で、その荒唐無稽さはある種、サドの小説をも思わせるものでした。当時は発禁処分にされた作品でもあります。谷崎の隠れた名作なのではないでしょうか。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)