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羽仁進監督『絵を描く子どもたち~児童画を理解するために~』

2011-05-21 07:15:00 | ノンジャンル
 羽仁進監督の'56年作品『絵を描く子どもたち~児童画を理解するために~』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 路上のタイルに描いた絵を説明する子ども。町の俯瞰移動にタイトルがかぶさります。新入生の姿に「4月」の字幕。図工教育について語る先生のナレーション。紙を配られ、他の子の様子を気にする子どもたち。最初から積極的に絵を描く子ども、不安そうに描き始める子ども、そして一人だけいつまでたっても描けない町野君。様々な授業が進むにつれて、絵にも個性が芽生えてきます。いろんな木の絵。乱暴だった子どもはある日坊主頭にされて来て、周りから散々からかわれると、孤立感を表す絵を描きます。競走で遅れて泣き出した田川さんは、その直後、他の色で太陽を隠し、激しい筆使いで、体の不調を表す紫とショックを表す赤を使って描きますが、それで気が晴れたのか、次に描いた絵は明るいものでした。「6月」の字幕。個人別に描いた順番で絵を整理する先生は、絵に日付けを書き入れます。町野君は一軒家の絵ばかり描き続けますが、彼の家はアパートの間借りで、一人で夜まで留守番をする日が多いのでした。彼はやがて絵が好きになりますが、単色の鉛筆で細かく描き、それは不安を表しています。田川さんは空想にあふれる絵を描き、それは暖かい家庭で育てられたことを表していましたが、一方、友達の輪になかなか入れず、それは最初一本だけの花を描いたことに表れ、しかし次第に山の中の一本の花が自立を表し、やがて花が増え、人間も描かれるようになっていきます。子どもたちの絵は内容が豊かになっていき、言葉での説明も増える一方、絵本のマネをしたものや怪物を描く絵も現れてきます。戦争画が流行しますが、先生はそこに憎しみや怒りが現れていないか探ります。町野君は母クジラの乳を吸う子クジラを描きますが、それは学校に残って先生に甘える彼の様子が反映していました。新しい材料で興味を引くため、粘土を使った授業をしますが、そこでは作られた蛇に重い意味が含まれています。指に絵の具をつけるフィンガーペインティングも、子どもの感情の解放には効果的です。自信を持ってきた子どもは、力に対する憧れからチャンバラやケンカを始めます。黒板に伸び伸びと描かせる授業も行い、それに楽しそうに参加していた田川さんは、色を使った女の子の絵を描くようになります。夏休みに川に行くと、子どもはそこを海に見立て、空想をかきたてて海の絵を描きます。「10月」の字幕。不透明水彩の授業。子どもは他のものを獲得していこうという熱意を示します。動物園の見学は強い感銘を与え、町野君も堂々とした象の絵を描きます。子どもたちの描いた絵は全て掲示し、自分への誇りと他の子への興味を持つようにします。体操の時間にも自信を持つようになる田川さん。戦争画を描いていた子らは、力強い絵を描くようになっていきます。仕事についての絵を描こうと言う先生に対して、生き生きとした表情を見せる子どもたちの姿で映画は終わります。
 これも40分足らずのドキュメンタリーでしたが、実際に子どもの絵を多く提示しての説明は説得力があり、生き生きとした子どもの様子も見られて楽しめました。戦後すぐの風俗的な興味も掻き立てる作品です。