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奥田英朗『邪魔』

2006-06-20 16:25:40 | ノンジャンル
 奥田英朗氏の「邪魔」を読みました。
 ある放火事件を捜査する若い刑事の行動を中心に、その刑事に放火の犯人と怪しまれている、放火当日現場の当直をしていた経理課長とその妻、放火時に若い刑事相手におやじ狩りをしようとした不良少年3人組、それに警察と放火された会社と関係する地元の暴力団、暴力団とつるむなど服務規程を破りクビ寸前の警官らが、放火の犯人探しの話にからんで、複数のドラマを形作って行きます。
 そうした中で、派閥にしばられ正当な捜査ができない警察内部の実情や、市民運動と悪徳企業の癒着、暴力団の凶暴さなどが描かれます。
 ドラマの展開のスピード、ドラマ自体の面白さ、登場人物の簡潔で適切な心理描写、どれをとっても一級品だと思いました。
 この小説はとても気に入ったので、「Favorite Novels」の「奥田英朗」の項に、細かいあらすじなどを載せました。興味のある方は、ご覧ください。

増村保造『清作の妻』

2006-06-19 16:29:06 | ノンジャンル
 WOWOWで増村保造監督の'65年作品「清作の妻」を見ました。
 大旦那(殿山泰司)の愛人をしていたお兼(若尾文子)は、大旦那が死に村に帰ってきますが、村八分に合います。一時除隊で村に帰ってきた清作(田村高廣)は村のヒーローとして凱旋しますが、お兼の不憫な境遇に同情し、やがて男女の仲になります。
 そして日露戦争が勃発し、清作は再び軍隊に召集されます。召集を祝う宴会の席で、夫を戦争で死なせたくないお兼は五寸釘で清作の両目を刺し、つぶしてしまいます。お兼は懲役に行き、清作はお兼と仕組んで兵役を免れたのだろうと陰口を叩かれます。始めはお兼を恨んだ清作でしたが、次第にお兼のおかげで、今まで世間の気に入るようにばかり生きてきた自分の生き方を反省し、懲役から帰ってきたお兼を正式の妻と迎えます。
 周囲の冷たい視線を浴びながら、二人は野良仕事に出かけますが、二人はそれでも幸せなのでした。
 というストーリーなのですが、絶えず山内正の不安な暗い音楽が響き、因習的な村の雰囲気を感じさせます。お兼が清作の目を刺すシーンはありませんが、その直後の血まみれになった清作の顔が見せるシーンはあり、かなり凄惨な感じを与えます。そういった点では同じく目を突く「春琴抄」よりもずっと荒々しいイメージでした。
 ラストシーンで泣いてしまう人もいるそうです。覚えておきたい一本です。

奥田英朗『最悪』

2006-06-18 16:56:24 | ノンジャンル
 奥田英朗氏の「最悪」を読みました。とても面白い小説でした。
 金属加工の工場主で、近所からの騒音の苦情の対応に苦慮し、取り引き先から2000万で新しい機械を入れる様勧められている中年男性、会社の新人歓迎会の時、上司に強姦されそうになったことを会社に訴えると逆に会社の揉み消し工作に合い、うんざりしているOL、トルエンの密売をしようとして、やくざに目をつけられ、500万の金を作れとやくざに命令された不良青年と、彼の彼女でありOLの妹である少女。彼らは、不良少年がOLが勤める銀行に強盗に入ることによって、一同に会し、図らずも四人で車で逃走するはめになります。OLの会社が持つ御殿場の保養施設に逃げ込みますが、やくざに発見され、その直後に警察にやくざもろとも捕まります。工場主は自分の工場を閉鎖し、隣の工場で働かせてもらうことになり、強盗をした青年は懲役に、OLは妹が強盗の一味だったことが明らかになって、銀行を辞め、デザイン事務所で新たな人生を始めます。
 この小説ではやくざの暴力が頻繁に描写されていて、そうした凶暴な人間 VS 心ある人間という構図が全体を通してあるように思いました。簡潔な文体、適格な描写、またストーリーも面白く、どんどん読める小説でした。
 まだ読んでいない方、オススメです。

加藤泰監督の命日

2006-06-17 17:15:03 | ノンジャンル
 今年から21年前の今日、加藤泰監督は亡くなりました。享年68歳でした。
 私と加藤監督との出合いは、私の大学時代、蓮實重彦先生の映画ゼミで「今上映されている『炎のごとく』を来週までに見てくるように」という宿題が出て、それで見たのが最初だと思います。翌週のゼミで感想を求められ、「料金の割にはあまり面白く無かった」という学生がいて、当時蓮實先生に心酔していた私はなんとか反論をしたくて「当日券だから鑑賞料が高く感じたのであって、プレイガイドで前売り券を買えば安く感じたんではないですか?」と訳の分からない発言をしたのを覚えています。
 また流血シーンで滝のごとく血が流れ出すのを批判的に見ていた私は「これは客を呼ぶためのプロデューサーの策略だ」と発言し、後で、加藤監督自身が進んで行ったことだと知って赤面したりもしました。
 「縦の構図」という言葉を初めて聞いたのもこの時のゼミだったような気がします。それ以降紆余曲折もありながら加藤作品を見続けて、京都までお墓参りにも行ってきました。
 加藤泰監督に関しては、「Favorite Movies」に項を設けてあり、特にオススメの映画も分かるようにしてあります。興味のある方、ぜひご覧ください。

ウランバーナの森

2006-06-16 16:53:19 | ノンジャンル
 「サウスバウンド」で一気にファンになった奥田英朗氏の作品を読破しようと、まず処女作の「ウランバーナの森」を読みました。
 リバプール生まれで4人組のロックバンドを組み、世界を席巻し、日本女性と結婚し、男の子を一人もうけ、現在はこの4年ほど夏を過ごしている軽井沢にいるジョンは、便秘になり、森深くにある病院を訪ねますが、その帰り深い靄の中で、以前に迷惑をかけ、今はこの世の人でない人々と再会し、過去に犯した彼らへの蛮行を謝罪します。そして、最後には便秘も治り、この4,5年書けなかった曲が書けるようになっている自分を発見する、という物語です。
 お分かりのように、これはジョン・レノンをモデルにしていて、著者によると、ジョンの伝記は多く書かれてきましたが、軽井沢で過ごした4、5年の夏に関して詳しく書いてある伝記というものが一つもないので、では自分が書いてやろうという気持ちで書いたのが、この本とのことでした。
 現在の幸せな家庭生活、過去の荒れていた日々、どちらも分かりやすい描写で、とても読みやすい小説でした。
 ジョン・レノン・ファンの方には、特にオススメです。