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奥田英朗『東京物語』

2006-06-22 17:34:17 | ノンジャンル
 奥田英朗の「東京物語」を読みました。
 著者と同じく1959年生まれの青年が東京に出てきて、1978年から1989年までの中から6日間だけ取り出し、その6日間をどのように過ごしたか、を書いた小説です。第一話「あの日、聴いた歌」は'80年12月9日ジョン・レノンが暗殺された日、ラジオでレノンの曲がかかりまくる中、広告代理店の一社員として仕事に忙殺されていた話。第二話「春本番」は'78年4月4日、上京した日、後楽園球場で行われていたキャンディーズの解散コンサートの熱狂ぶりを外から友人と体験した話。第三話「レモン」は'79年6月2日、大学の演劇部の飲み会で女の子を侮辱し、その後泣いてたと聞き、謝るために彼女を探すが結局自分が騙されてたことに気付くが、その女の子とキスする仲になるという話。第四話「名古屋オリンピック」は'81年9月30日、名古屋で内装を営む実家がオリンピックの名古屋誘致を望む一方、主人公は使えない部下を抱えて仕事に四苦八苦するが、オリンピックは結局ソウルに決まり、名古屋の実家はがっかりするが、東京は無関心だった話。第五話「彼女のハイヒール」は'85年1月15日、親のだまし討ちにあってお見合いした主人公は相手もそうだと知って、急に親しくなり、その日を一緒にすごすことになり、背の高い彼女はハイヒールをパンプスに履き替えてくるが、気分を害するとまたハイヒールに履き替え、結局二人は親しくなるという話。第六話「バチェラー・パーティー」は'89年11月10日、独立した主人公は、取引先の地上げ屋に飲みにつき合わされ、同僚のバチェラー・パーティーに遅れていき、そこで将来のことをいろいろ考える。そしてその日ベルリンの壁は崩壊し、時代は着実に変わっているのだった、という話。
 私も主人公、つまり著者と同じ年の生まれなので、時代的な感覚はびったしでした。そこで、「シティーロード」が「ぴあ」に続いて隔週になったというのは間違いで、「シティーロード」は月刊のままだった、というような指摘もできる訳です。
 小説としては気軽に読める小説で、これまで読んだ奥田作品とはちょっと色合いが変わったな、と思いました。今後の小説の成りゆきを見守りたいと思います。