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稲生平太郎『何かが空を飛んでいる』

2016-10-16 17:19:00 | ノンジャンル
 稲生平太郎さんの’13年作品『何かが空を飛んでいる』を読みました。
 本文からいくつか引用させていただくと、「また、アメリカの円盤系陰謀理論の背後にも、極右勢力の存在が窺えよう」、「1977年、アメリカの円盤研究団体『グラウンド・ソーサー・ウォッチ(GSW)』はCIAに対して秘密UFO文書を公開するよう情報自由化法に基づく訴訟を行ない、さらに翌年には、GSWの設立した『UFO秘密政策に反対する市民の会』が、CIAのみならずFBI、NSA(国家安全保障局)、陸・空・海軍などに対して同様の訴訟に踏み切った。さて結果はどうだったのか。国家安全保障を理由にかなりの文書は機密解除にいたらなかったものの、でるわ、でるわ、UFO関連文書が出てきたのだ。1969年のコンドン委員会の勧告以降、UFOを調査する公式機関は存在せず、政府はUFOについては何もしていませんといつも言ってたのにである」、「権力は自己保存のために徹底した管理を要求する。その方法のひとつが情報収集で、理屈としては、情報を収集すればするほど世界は理解されやすくなる。つまり管理が容易になる。そこで、情報収集への情熱は肥大化、自己目的化していくわけだが、しかし、これは情報が集積された分だけ世界像は混乱していくという、逆説的な状況を現出せしめることになる。換言すれば、クサイ、怪しいと思われた情報はいかに馬鹿げたものでも片っぱしからファイル化されていき、その結果生じる膨大な情報の山、断片化された世界を前にして、ひとはただ途方に暮れるばかりである」、「さらに、以上の事例からわかるのは、謎の物体の正体とされるものが、飛行船から飛行機、ロケット、さらに宇宙船へと『進化』していることだ。すなわち、これはテクノロジーの進歩に歩調を合わせている。もしくは、アメリカの飛行船騒ぎに顕著なごとく、一歩先んじているというほうがより正確だろう」、「(前略)今年の三月、『謎の空飛ぶ円盤』という古い日本未公開映画のDVDが発売され、ごく一部の界隈で騒然となった。原題はすばりThe Flying Saucer、本国アメリカでの公開年が1950年。この作品は最も初期の円盤映画のひとつであるのみならず、円盤××××説を展開した点において、歴史的には非常に重要な作品で、したがって、真摯な円盤ファンなら是非とも購入しておくべきだろう」、「とはいえ、果敢に挑んだ映画監督は決して絶無ではない。『惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!』(53)の冒頭と結末の場面とか、本質に偶然触れてしまったZ級の『金星怪人ゾンダーの襲撃』(66)などの特殊例を除くと、『純』円盤映画がひょっとしたら可能ではないかと最初に思わせた作品として、『ディーモン 悪魔の受精卵』(76)を挙げておきたい」、「(前略)『純』円盤映画の道は当然ながら険しかった。やっぱり無理なのかと諦めかけていた頃に、意外やオーストラリアから突如出現したのが、野心作『エンカウンターズ------未知への挑戦』Encounter at Raven’s Gate(88)」、「(前略)次に重要な作品は90年代の『ファイヤー・イン・ザ・スカイ 未知からの生還』Fire in the Sky(93)となるだろう(日本未公開、ヴィデオのみ発売)」、「無神論者、女権拡張論者、産児制限者、(中略)ラディカリズムとオカルティズムの結合が決して特異なものでないことは銘記されねばならない」。
 また「怪奇幻想映画オールナイト全五夜」と題して、以下の映画が挙げられています。「第一夜 ①吸血鬼(カール・ドライヤー、31年) ②悪魔の人形(トッド・ブラウニング、36年) ③夢の中の恐怖(アルベルト・カヴァルカンティ他、45年) ④大アマゾンの半魚人[3D版](ジャック・アーノルド、54年) ⑤ブードゥリアン(ジャック・ターナー、43年)」、「第二夜 ①ガス人間第一号(本多猪四郎、60年) ②リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(ロジャー・コーマン、60年) ③ピラニア(ジョー・ダンテ、78年) ④サンタ・アレグレ(アレハンドロ・ホドロフスキー、89年) ⑤女吸血鬼(中川信夫、59年)、「第三夜 ①養鬼(唐偉成、80年) ②たたり(ロバート・ワイズ、63年) ③悪魔の赤ちゃん(ラリー・コーエン、74年) ④地獄(中川信夫、60年) ⑤悪魔のいけにえ(トビー・フーパー、74年)」、「第四夜 ①ディーモン 恐怖の受精卵(ラリー・コーエン、76年) ②ティングラー(ウィリアム・キャッスル、59年) ③フェイズⅣ(ソール・バス、74年) ④失われた時を求めて〔影なき狙撃者〕(ジョン・フランケンハイマー、62年) ⑤恐怖(セス・ホルト、61年)」、「最終夜 ①ザ・ラスト・ウェーブ(ピーター・ウィアー、77年) ②ザ・センダー 恐怖の幻想人間(ロジャー・クリスチャン、82年) ③東海道四谷怪談(中川信夫、59年) ④キャリー(ブライアン・デ・パルマ、76年) ⑤イレイザーヘッド(デイヴィッド・リンチ、77年)」。

 前半のUFOに関する考察は楽しく読ませていただきましたが、後半のオカルティズムに関する考察は正確な記述ながら文献学的で私には退屈でした。