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『年報・死刑廃止2012 少年事件と死刑』

2013-06-01 05:15:00 | ノンジャンル
 '12年刊行の『年報・死刑廃止2012 少年事件と死刑』を読みました。
 掲載されている文章は、巻頭座談会として、角田由紀子・安田好弘・北原みのり・笹原恵による「魔女裁判を超えて ―死刑法廷とジェンダー」、“特集・少年事件と死刑”として、寮美千子「1人として変わらない子はいない」、高田章子「罪を犯した少年は、更正できないのか?」、西澤哲・本庄武・青木理・岩井信による座談会「少年に死刑を科すとはどういうことか」、永田憲史「犯行当時少年の被告人に対する死刑選択の変遷」、“死刑をめぐる状況2011~2012”として、青木理「平岡法相の地元・岩国にて 原発・死刑・基地を考える」、死刑執行抗議(安田好弘「小川法相の年度末の死刑執行に抗議する」、安田好弘「再審への道を断った不当な死刑執行」、小川原優之「日本弁護士連合会の死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける活動」、可知亮「死刑廃止チャンネルの始動」、太田昌国「広がりゆく死刑囚の表現活動 第七回死刑囚表現展をふり返って」、死刑映画週間(太田昌国「特集上映『「死刑の映画」は「命の映画」だ』を終えて」、中村一成「死刑について考えることは、命について、社会について、国家について考えること」)、またそれ以外に、前田朗「死刑関連文献案内」、中村一成「死刑映画を観る 『死刑弁護人』斉藤潤一監督に聞く」、菊池さよ子「死刑判決・無期懲役判決(死刑求刑)一覧」、「死刑存廃国リスト」、「死刑廃止運動にアクセスする」、「死刑を宣告された人たち」、「法務大臣別死刑執行記録」、死刑廃止年表2010」となっています。
 この本を読んで新たに知ったことは、死刑囚は圧倒的に男性が多いこと(女性は全体の4%ほど)、女性の弁護士も現在16%ほどしかいないこと、和歌山カレー事件では、夫が自分で砒素を飲んだと言っているにもかかわらず、法廷では無視されていること、裁判員制度が始まり、判決が求刑を上回るケースが出てきた結果、求刑が重罰化してきていること、社会性涵養プログラムは奈良の少年刑務所で始まったばかりであること、少年犯罪は1960年代の3分の1まで減ってきていること、無期懲役は実際には25年以上経過しないと仮釈放は認められず、ここ数年仮釈放は年に1人いるかいないかで、事実上の終身刑になっていること、殺人事件の起訴に対する死刑判決の割合は、この20年で4倍近くに上昇していること、殺人件数は過去最低にまで減少してきていること、検察官の求刑は世論の厳罰化に対する要求に後押しされていること、1990年代の終わりに犯罪の認知件数が激増した結果、厳罰化を求める世論が形作られたが、それ以降は犯罪件数が激減したにも関わらず、世論が変わらずにいること、少年事件では少年法の縛りがあり、加害者側のことをメディアはなかなか伝えられないため、加害者が正体不明のモンスター化する傾向にあること、裁判所ではまだ加害者のトラウマをどう評価していいかが固まっていないこと、死刑を回避して、その更正をきちんと保障するには、相当の社会資源を投入しなければならないし、その分経済的にもコストがかかること、18歳未満の少年に対する死刑は法的に禁止されているが、18歳以上20歳未満のいわゆる年長少年の死刑については明文化されていないこと、1970年代軍事政権下にあった南米ウルグアイと、民生下ではあったが同じ時期のペルーにおける政治犯は、獄中での集団的生活が許可され、演劇集団をつくり、集団的討論を通してシナリオを創作することも、獄内公演に関しては楽器を持ち込んで伴奏し、大きな壁画を描いて背景とすることも認められ、党派によっては大きな字でスローガンを描き、集団で料理をつくることも認められていたので、誰かの誕生日にはパーティ料理をつくり、みんなで楽器演奏や歌を楽しみながら、祝うことも可能だったこと、絞首刑では意識が5~8秒、長ければ窒息しながら2~3分間意識が保たれること、再審決定をするということは、最高裁で確定した判決を下級の裁判官がひっくり返すことなので、再審決定をした裁判官は左遷されるリスクが高いことなどでした。
 裁判制度は、権力の横暴を阻止し、個人の感情によるリンチをなくそうということで作られたにもかかわらず、最近の状況は完全に逆行していること、犯罪はどうしても起きてしまう、社会的に不可避なリスクであるので、被害者や遺族に社会がどう向き合うか、どうフォローしていくかを考えていかなければならないなどの主張には、なるほどとも思いました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto