黒沢清監督・脚本の'12年作品『贖罪 インターナショナル版』をWOWOWプライムで見ました。殺された少女の母(小泉今日子)が、現場に居合わせながら犯人につながる情報を提供しえない4人の少女に贖罪を求め、大人になった4人(蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴)が殺人や死をもって償い、母の元恋人であった犯人(香川照之)も自殺するという4時間半の大作で、沈んだ色調とゆるやかな移動撮影が印象に残る映画でしたが、ラストにはやはりいつもの黒沢作品と同じく、廃墟と森が出てきていました。
さて、宮田珠己さんの'12年作品『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』を読みました。著者が面白いと思った本を紹介している本です。
この本のおかげで読んでみたいと思った本は、中野美代子著『奇景の図像学』、平田篤胤『仙境異聞・勝五郎再生記聞』(107ページの絵が面白いとのこと)、赤瀬川原平『超芸術トマソン』、都築響一『珍日本紀行』、坂口恭平『TOKYO一坪遺産』、スティーヴン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』(132ページで言及)、小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』(同上)、マンガ『赤タイツ男』(133ページで言及)、トニー・ロビンソン『図説「最悪」の仕事の歴史』、中野純『庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか』、矢島新『日本の素朴絵』、視覚デザイン研究所・編集室『オレたちに明日はない?』、須田郡司『日本石巡礼』&『世界石巡礼』など。
また、この本で初めて知ったことは、中世から江戸のはじめ頃にかけて、補陀落(フラダク)と呼ばれる観音浄土を目指して、わずかな食料とともに人を乗せて外から釘で打ちつけた船を大平洋に船出させることが多く行われていたこと、その船の実物は那智の補陀落寺にあること、羊のなる木があるとかつて信じられていたこと、人類の祖先は最後はみなアフリカのひとりの女性に行きつくが、アボリジニだけはその女性に行きつかないという説があること、アボリジニは世界の表層に現れている現状だけでなく、潜在的な状態をも一緒に見ているということ、中世から平安前期には全国に幅12m前後の直線道路が走っていたこと、中世のキリスト教では、性行為は罪深いものだったので、子どもを産むためにのみ仕方なく、快楽を一切感じないようにして行われるべきと考えられていたこと、かつて日本では夜這いが村人総出で行われていたこと、ヒトラー・ユーゲントへの反逆としてパーティを楽しんだり、半分ズボンを履いたり、旅行したりしていたこと、かつて四国遍路では崖から飛び降りたりしていたこと、日本の中世での利子は一般的には元本と同額か2倍が上限になっていて、それ以上は増えなかったこと、また10年で借金は帳消しになったこと、深海には鉄の貝殻を持つスケーリーフットという貝がいること、石油は地中から無尽蔵に染み出てきているという説があること、かつて中世ヨーロッパでは、人間を害した動物に対し、真面目に裁判を行っていたこと、17世紀から18世紀にかけて、イスラム世界には100万人に及ぶヨーロッパ人奴隷がいて、その多くは海賊によって海上で拿捕された船員たちだったが、ときには沿岸部の漁村が襲撃され、村民まるごと連れ去られたりもしたこと、日本の中世人は眼を怖れ、死者のものでさえ非常に怖れたこと、戦国時代から江戸時代にかけて、武家社会では跡取りを作ることが大事とされ、有り余る余暇の大半はセックスに費やされ、それがもとで衰弱し早死にする場合も少なくなかったこと、また江戸時代から昭和戦前までの東京の下町には、性の自由を得られる施設は女性のほうが多かったこと、そして同時に下町には多数の男性と関係のある「おばさん」と呼ばれる女性がいて、その女性やその女性が産んだ子は町内の相互扶助で生活していたこと、土の中に咲く花、根っこが550kmもある雑草があること、などなどでした。
宮田さんのいつものユーモラスな語り口を読むだけでも楽しい気分にさせてくれる本です。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
さて、宮田珠己さんの'12年作品『はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある』を読みました。著者が面白いと思った本を紹介している本です。
この本のおかげで読んでみたいと思った本は、中野美代子著『奇景の図像学』、平田篤胤『仙境異聞・勝五郎再生記聞』(107ページの絵が面白いとのこと)、赤瀬川原平『超芸術トマソン』、都築響一『珍日本紀行』、坂口恭平『TOKYO一坪遺産』、スティーヴン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』(132ページで言及)、小林恭二『ゼウスガーデン衰亡史』(同上)、マンガ『赤タイツ男』(133ページで言及)、トニー・ロビンソン『図説「最悪」の仕事の歴史』、中野純『庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか』、矢島新『日本の素朴絵』、視覚デザイン研究所・編集室『オレたちに明日はない?』、須田郡司『日本石巡礼』&『世界石巡礼』など。
また、この本で初めて知ったことは、中世から江戸のはじめ頃にかけて、補陀落(フラダク)と呼ばれる観音浄土を目指して、わずかな食料とともに人を乗せて外から釘で打ちつけた船を大平洋に船出させることが多く行われていたこと、その船の実物は那智の補陀落寺にあること、羊のなる木があるとかつて信じられていたこと、人類の祖先は最後はみなアフリカのひとりの女性に行きつくが、アボリジニだけはその女性に行きつかないという説があること、アボリジニは世界の表層に現れている現状だけでなく、潜在的な状態をも一緒に見ているということ、中世から平安前期には全国に幅12m前後の直線道路が走っていたこと、中世のキリスト教では、性行為は罪深いものだったので、子どもを産むためにのみ仕方なく、快楽を一切感じないようにして行われるべきと考えられていたこと、かつて日本では夜這いが村人総出で行われていたこと、ヒトラー・ユーゲントへの反逆としてパーティを楽しんだり、半分ズボンを履いたり、旅行したりしていたこと、かつて四国遍路では崖から飛び降りたりしていたこと、日本の中世での利子は一般的には元本と同額か2倍が上限になっていて、それ以上は増えなかったこと、また10年で借金は帳消しになったこと、深海には鉄の貝殻を持つスケーリーフットという貝がいること、石油は地中から無尽蔵に染み出てきているという説があること、かつて中世ヨーロッパでは、人間を害した動物に対し、真面目に裁判を行っていたこと、17世紀から18世紀にかけて、イスラム世界には100万人に及ぶヨーロッパ人奴隷がいて、その多くは海賊によって海上で拿捕された船員たちだったが、ときには沿岸部の漁村が襲撃され、村民まるごと連れ去られたりもしたこと、日本の中世人は眼を怖れ、死者のものでさえ非常に怖れたこと、戦国時代から江戸時代にかけて、武家社会では跡取りを作ることが大事とされ、有り余る余暇の大半はセックスに費やされ、それがもとで衰弱し早死にする場合も少なくなかったこと、また江戸時代から昭和戦前までの東京の下町には、性の自由を得られる施設は女性のほうが多かったこと、そして同時に下町には多数の男性と関係のある「おばさん」と呼ばれる女性がいて、その女性やその女性が産んだ子は町内の相互扶助で生活していたこと、土の中に咲く花、根っこが550kmもある雑草があること、などなどでした。
宮田さんのいつものユーモラスな語り口を読むだけでも楽しい気分にさせてくれる本です。
→Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)