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川崎ゆきお『小説 猟奇王』その1

2011-09-03 05:32:00 | ノンジャンル
 岡野宏文さんと豊崎由美さんが対談本『読まずに小説書けますか』の180~181ページのところで絶賛している、川崎ゆきおさんの'98年作品『小説 猟奇王』を読みました。
 昭和初期に活躍した怪人についての特集記事を書くため、フリーライターの木下は、当時活躍していた探偵の沢村のもとを訪ねます。沢村はしつこく話を聞こうとする木下に対して、単なるヨタ話だと前置きした上で、昭和初期に怪人二十面相の手下と名乗る男が、二十面相の遺産である古美術品を闇で売っていたという噂が流れたことを話します。すると、二人が話をしていた喫茶店に、何と、仮面舞踏会のような仮面をした男と、忍者そのままの格好をした男が現れます。
 大阪から来ていたその二人「猟奇王」と「忍者」は、東京猟奇団のアジトへと遊びに来ていたのでした。猟奇王は、一般人が非社会的な狼藉を公然とやっていまう今の時代に、猟奇的犯罪を犯すことの困難さを身にしみて感じていて、また「怪人」がギャグとしてしか社会に受け入れられない現実にも苦しんでいました。東京猟奇団総裁・角一郎の接待で、深夜のファミレスを訪れた猟奇王と忍者は、彼らをつけ狙う正義の味方・紅ガラスに出会いますが、彼はファミレスで3ヶ月もねばっており、そこをアジトとせざるを得ないホームレスに身を落としていました。猟奇王らと紅ガラスは、正義とか悪とか言っている場合ではなく、毎日の生活に追われて過ごしていることから、お互いの立場を忘れ、悩みを語り合ってしまいます。
 一方、木下は沢村探偵から沢村の甥で、沢村の助手をしている便所バエこと花田秀一(しゅういち)を紹介され、怪人探しに協力してもらうことにします。怪奇ロマンの主人公として世人に受け入れられず、世間の片隅で生息するしかないことを嘆く猟奇王と忍者を、吉祥寺の裏路地で発見した便所バエは、彼らを尾行しますが、玉川上水付近で見失い、その後、逆に角一郎の手下に尾行されて、木下の住むマンションを知られてしまいます。
 便所バエからその話を聞いた木下は、スポーツ誌に記事を持ち込むと、翌日のスポーツ誌には「玉川上水に怪人・猟奇王のアジトが!」の大見出しとともに、猟奇王と忍者のイラストが掲載され、それを知った角一郎は東京猟奇団のアジトへと続く玉川上水の土管を塞ぐよう、手下に命じます。猟奇王と忍者には、スポーツ誌を見た野次馬がつきまとうようになりますが、猟奇王らが駅前に出ると、野次馬らは日常を思い出し、駅の改札口に吸い込まれていきました。再び現れた野次馬から逃れるため、野次馬の一人だった若い娘・カナの導きによって、猟奇王と忍者はお宮の裏に隠れます。若い娘が苦手な忍者が先に一人で東京怪奇団のアジトへ戻った後、猟奇王を気に入ったカナは自分の携帯の番号を猟奇王に渡し、猟奇王も東京猟奇団の事務所の電話番号をカナに教えるのでした。
 その頃、警視庁公安課の仲代警部は、玉川上水の土管が塞がれているのを確認し、その土管がつながっているであろう、戦時中に使われていた地下壕が現在何者かによって転用されているかもしれないと考えます。仲代はスポーツ誌の記事を書いた木下を訪ね、彼の紹介で便所バエにも会いに行き、今後猟奇王に関する情報が入ったら必ず知らせてくれるように頼みます。
 野次馬騒ぎは1日で収まり、猟奇王はカナから「夕食を作って自宅で待っている」という連絡を受けます。角一郎は、猟奇を続けていくことのしんどさから、東京猟奇団を解散し、現在副業でやっている闇の玩具製造に専念したいという思いを恥じ入りながら猟奇王に漏らしますが、猟奇王はそんな角を慰めます。猟奇王は玉川上水を散歩していて、行き倒れている紅ガラスを発見し、おにぎりを与え、お茶もほしいと言う紅ガラスのためにお茶を買いに行って戻ってくると、そこには「近いうちにお前を倒す」という置き手紙が残されていました。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/