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清水宏監督『泣き濡れた春の女よ』

2011-09-02 06:16:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが本『教養主義!』の中で、文句なしに大好きな監督の一作として挙げている、清水宏監督の'33年作品『泣き濡れた春の女よ』をビデオで見ました。
 フェリーに乗り込む人足と貨物列車。フェリーの中では「上官」と呼ばれる人足頭が、人員点呼し、炭鉱で酒と女と博打は禁止だと命じます。甲板で人足の一人・健二(大日方傳)と知り合う、幼い娘・おみつを連れた酒場女のお浜(岡田嘉子)。新米の女・お藤は将来への不安から泣き出します。
 雪の原野を馬ぞりで進む一行。「上官」から酒場に誘われた健二は、酔客にからまれるお藤を助け、お浜にますます気に入られ、お浜は自分の奢りだと言って、健二や彼の親友の忠公に酒を振る舞います。
 翌朝、お浜から「上官」宛てで送られて来た請求書を健二に見せる「上官」。女給たちは、健二に気のあるお浜とお藤の争いを茶化して、さざめき合います。母の具合が悪いと言って金の無心をお浜に頼むお藤でしたが、お浜は貧乏な炭鉱夫以外にいい男を見つけろと言って、相手にしません。それを聞きつけた健二は「上官」に給料の前借りをし、お藤に金を渡します。お礼に服を洗濯すると言うお藤。
 お浜はお藤に代わって健二の服を繕い、自分の部屋へ服を取りに来るように健二に言います。そこへお浜に横恋慕する「上官」がやって来ると、いきなり健二を殴り倒します。
 翌朝、昨日のことで手にケガを負ったとして「上官」の点呼に応じない健二。忠公はお藤からお呼びがかかり、いさんで出かけていきますが、健二に会わせてもらうために呼んだとお藤から聞くと、忠公は怒って帰ります。「上官」は健二がお浜の部屋にいりびたっているのでは、と探しに来ますが、健二はおみつの部屋で彼女の相手をしているのでした。お浜が身を売り、おみつに淋しい思いをさせてきたのを知った健二は、お浜に子守唄をおみつへ歌ってやってくれと言います。
 その頃、お藤に振られてやけっぱちになっていた忠公は落盤事故に会い、炭鉱に一人閉じ込められます。その知らせを聞いた健二は、すぐに現場に駆けつけ、一人で救出に向かいますが、忠公は既に息絶えていました。死んだ忠公に話しかけて健二が悲しみに暮れているとそこへ「上官」が現れ、落盤事故で死ぬのは炭鉱夫として当然だから悲しむに当たらないと言い放ち、怒った健二はナイフを持ち出して「上官」と雪の中での乱闘となり、「上官」にケガを負わせます。
 「上官」はお浜に匿われた健二を引っ立てに来ますが、それまでの生活を反省したお浜は、今までおみつに不憫な思いをさせたことを悔いて涙し、これからはずっと一緒だと言っておみつを安心させた後、「上官」を誘惑して、その間にお藤とともに健二を逃がします。「上官」を相手に酒に酔い、雪の降り出す中、出港する船を見つめるお浜。彼女の哀し気な顔とともに映画は終わります。

 強いコントラストの白黒画面と、真っ黒なシルエットが冬の雰囲気を強烈に醸し出す、そんな映画でした。乱闘シーンで、バサバサと屋根や木から落ちてきた雪の重さも印象に残っています。