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石川英輔『大江戸リサイクル事情』その2

2011-09-17 07:32:00 | ノンジャンル
 ウィリアム・ワイラー監督・製作の'51年作品『探偵物語』をWOWOWで見ました。カーク・ダグラスが主演の刑事を演じる、ニューヨーク21分署を舞台としたグランド・ホテル形式の映画でしたが、何とも陰惨な内容でした。ニコラス・レイ監督の処女作『夜の人々』で主演したキャシー・オドネルが会社の金の使い込みをした青年の恋人役で、リー・グラントが万引きをした女性の役で出ていたのが、唯一の見どころでしょうか?

 さて、昨日の続きです。
 平安時代以降の焼き畑と官営の牧場経営でススキの原となっていた武蔵野台地は、江戸時代になって木材と落ち葉の堆肥、薪・木炭への需要から、クヌギやコナラなどが植えられて需要を上回る雑木林が形作られました。人や物の輸送は専ら人が担いで行い、庶民は家にいながら物売りから必要なものを手に入れることができました。(車に乗ることは変化を嫌う幕府から禁止されていましたが、これも階級の別なく禁止されたものでした。ちなみに現在進められている電気自動車ですが、日本国内の6千万台を全部電化するには、2400万kw/時の電力が新たに必要になり、また廃バッテリーの処分問題も起きてきます。)世襲制の山林奉行によって森林は代を越えて保護され、それが漁業資源の保護にもつながっていました。幕藩体制は地方自治を保障し、縦割り行政の弊害も受けない藩による各産業への横断的な行政が可能でした。水車も広く利用され、壊れた物を修繕する専門職も発達していました。
 こうした生活スタイルに比べて、現在の大量消費の生活スタイルは、便利さを追い求める余りに、体を動かさないことを原因とする不健康を生むとともに、時間に追われるストレス圧の高い生活になっていると著者は語ります。(ちなみに、幕末期の記録によると、当時の大工が働いた時間は平均すると1日に実働4時間か4時間半くらいだったそうで、休みたい時に休む、なんとものごかな生活だったようです。)そして20年前の、もっとつつましい生活というオプションを設けたほうが、きっとホッとする人が多くなるのではないかと提案しています。

 この本で一番驚いたことは、これらの文章が最初に掲載された場所が、原子力文化財団発行のエネルギー専門誌『原子力文化』であったという点です。原子力行政のトップで働いているブレインの人は、実は単なる原子力推進派ではなく、もっと懐深く、より慎重に、長期的視点に立ってエネルギー問題を考えているのだと以前聞いたことがあるのですが、それと合致する結果でした。
 また、この本には江戸時代の庶民の物価についての具体的な記述もあり、たとえば当時の中流階級ともいうべき一人前の大工の日当が500文ぐらい、農村で一家族が楽に暮らせるには一両、当時の高級照明だったナタネ油で夜更かしすると一晩で20文、といった具合に、当時の生活を自分の頭の中で再現できるのも面白いと思いました。
 福島での原発事故により電気中心の生活スタイルの見直しが迫られている今に読むと一段と面白い本だと思います。公共図書館でも借りられ、文庫本として買っても安く手に入る本ですので、是非一読されることをお勧めします。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/