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三崎亜記『刻まれない明日』

2009-09-16 16:10:00 | ノンジャンル
 昨日富士急ハイランドに行ってきたついでに、話題の吉田うどんを「桜井うどん」さんで食べてみました。名物にうまいものなしの格言の通り、うどんはパサパサでつゆも単なる醤油味、なんてことないものでした。ただ壁に張ってある芸能人の色紙の数は大したものでした。

 さて、三崎亜記さんの最新作「刻まれない明日」を読みました。
 10年前に町のある地区で3千人を超える人が一瞬のうちに消えてしまった事件。その地区で一人消え残った沙弓は10年ぶりに町に戻り、道に刻まれた記憶を守る歩行技師に出会って再び人生を歩き始める決心をします。消えた地区にあった図書館の分館で、消えた人々が今だに本を借り続けていることを遺族に報告する仕事をする西山係長と新しい人生を歩く決心をする、不倫に疲れてこの町にやってきた藤森さん。何人かの遺族とともに実在しない鐘の音が聞こえる駿は、音の歪みを正す共鳴士の鈴(リン)とともに、皆に鐘の音を聞かせることによってその鐘を作った谷本さんに新たな鐘を作ってもらうことに成功します。難病をかかえているため人との付き合いを断ってきた坂口さんは、消えた夫のバス運転手を待つ持田さんと知合うことによって、人と関わる勇気を持つようになります。10年前に放浪する音楽家に曲を託された宏至は、登校拒否の若葉とともにその曲を奏でることができるようになります。10年前に違法な貯蔵庫から変質した思念が漏出して事件が起きた現場に立ち合い、その後遺症で人に顔を覚えてもらえなくなった黒田さんは再び事故に会いますが、部下の梨田さんが黒田さんと同じ後遺症を背負うことで黒田さんは再び人生を歩み始めます。そして2年後、地区が再開発され、これまでの登場人物たちが皆生き生きとそこで生活を始める中、歩行技師の幡谷さんは沙弓と再会するために歩き始めるのでした。
  三崎さんのいつもの小説のように、不可思議な設定の舞台の中で人と人とのつながりの根源的な意味を模索するという見事な物語が展開されていました。特に素敵な青春小説にもなっていた第二章がいいと思いました。小説が好きな方には文句無しにオススメです。なお、詳しいあらすじは、私のサイト(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)→「Favorite Novels」→「三崎亜記」の場所にアップしておきましたので、興味のある方はぜひご覧ください。