「友だちは楽しく怖い」
❤ アフリカの旅より帰りてきし友はわれより偉くゆたかに見える 松井多絵子
昨日、5月28日「NHK短歌de胸キュン」の再放送を見た。この4月から第4週の講師は梅内美華子。歌誌「かりん」の編集委員である。青森生まれ、40代の初めの若さで歌壇で活躍している。11歳のときから短歌を作っていた彼女は、番組のなかで若い人たちと友達のように作品を語りあっていた。すでにこの番組のテキストでもある「NHK短歌5月」に梅内美華子の ♠ 「自分らしくうたおう~友だち~」が掲載されている。
友だちは家族の次に身近な存在でしょう。~友だちを描いた短歌を見てみましょう。
♠ 少年時友とつくりし秘密基地ふと訪ぬれば友が住みおり 笹 公人
♠ 透明のシールをピアスの穴に貼るともだち 白い逆光のなか 山崎聡子
♠ 酔へば記憶なくなる友を少しだけ羨みてバーの扉を開く 田村 元
♠ 反論をさくらめーるで届け来る魚座生まれのアバウトな奴 大辻隆弘
~世代や場面によってさまざまな出会いや交流があります。長い付き合いになって、心を許し合うと、家族や恋人が知らないことまで共有していることもあります。楽しいようで、怖い。
この梅内の本音のことばに私は共感する。S子が居酒屋でこんなことを言ったことがあった。 「私は旧友ともう付き合いたくない。昔の怨念をまだ抱えていて、表面は親友だけど何だか怖い」と。 無意識に放った言葉が友を傷つけていた、傷は治らないまま付き合っている。S子は言った。「私は新しい友が欲しいの。今なら親しくても相手を傷つけるようなことを不用意に言わないわ」 新しい友との出会いは年々減る老女たち、私もその一人だ。
友はみな旅をしている連休に昼餉のための瓜を乱切り
5月28日 松井多絵子