えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

こころノート

2014-05-27 09:21:19 | 歌う

            「こころノート」

❤文芸にかかわるなと言いしその父の書棚に日本文学全集   松井多絵子

 父は私が小説を読むのを嫌がった。自分の書棚には溢れるほど小説があるのに。私はこっそり父の本を持ち出して読み、書棚の元の場所に戻していた。バレタことはなかったが、急いで読んだためか本の内容をよく憶えていない。先日申し込んだ ✿ こころノート を昨日いただいた。表紙の漱石の写真は優しそうだ。が、その彼の頭上のペン先は鋭い。表紙を繰ると❤「朝日新聞に連載された夏目漱石の主な作品」の一覧表。小説、随筆など14もある。しかも約10年の間に「よくまあ!」と驚く。最後は未完、49歳で世を去ったのだ。

 「こころノート」の漱石作品の一覧表を見ながらわかった。父が「漱石なんて読むな」と中学生の私に言った理由が。

♠ 「それから」~裕福な実業家の息子が、友人の妻と再び恋に落ち破壊していく様を描く。

♠ 「門」~親友の妻を奪って結婚した主人公。罪の苦しみにおそわれ、やがて禅寺へ。

♠ 「行人」~妻が信じられず、妻の貞操を弟に試させる孤独な知識人の姿を描く。

♠ 「明暗」~三角関係を軸に濃密な人間ドラマにエゴイズムをえぐり出した未完の絶筆。

 漱石の恋愛小説を十代の娘に読ませたくなかった父の気持ちを今頃にになって知る。 「それから」 以後、漱石の小説の恋愛はエスカレートしつづけているのだ。恋のエゴイズムをえぐり出す「明暗」を書きながらあの世へ行ってしまった漱石。文学はコワイ。そのコワイ文学に私が関わったのは、父が他界した後である。あの世で父と再会するのが恐ろしい。

❤わが歌を一首も知らぬ亡き父へ詫び状ではなく挑戦状lを

                   5月27日  まだ元気な松井多絵子