夏の☀小島なお
毎週日曜日の朝6時から25分間がNHK短歌、その第1週の講師は小島なお である。
角川短歌賞を受賞したときは18歳、まだ高校生だった。あれから12年、彼女はいまNHKの短歌の先生、もう「なおチャン」ではなく小島なお先生である。角川賞の受賞作は「乱反射」、表面がデコボコした物体に光線が当たると四方八方に反射する。夏の晴天の真昼はまさに「乱反射」の世界、強い光を跳ねかえすことが出来る若さ、小島なおよ光になれ。
山田航は昨年末に刊行した『桜前線開架宣言』で1980年生まれの歌人19人のなかに小島なおを挙げている。石川美南、山崎聡子、野口あや子などには面識があるが小島なおはテレビでしか私はお目にかかっていない。小島なお先生の私の好きな夏の歌を記す。
☀ ☀ ☀
東京の空にぎんいろ飛行船 十七歳の夏が近づく
噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし
夏空へ黙って階段のぼりゆく逆光まぶしくきみが見えない
十代にもどることはもうできないがもどらなくていい 濃い夏の影
低音でゆっくり話すきみの声アルぺジュオのように夏が昏れゆく
水抜きしのちのプールに夕焼けのひかりを入れて完了とする
この六首は 『桜前線』に取り上げられた約六十首のなかから抄出したが、小島なお
は夏が似合う女におもえる。山田航は「『乱反射』の歌は内省的な部分が薄く、自分が向き合っている現実の一瞬を切り取ることによって特別な日常として肯定する」と述べている。
あゝ、この夏 わたしにも特別な日常があったなら、、。
7月24日 松井多絵子