えくぼ

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終わった人

2016-07-18 09:19:28 | 歌う

                終わった人

 ♥ 落日が窓に来ている何ごともなく今日が終わってほしい  松井多絵子

 「週間ベスト10」は日曜の朝日・読書の頁の片隅にある。7月3日~9日、八重洲ブックセンター本店調べ、フィクション部門で内館牧子著『終わった人』が7位である。かなり前から週刊ベスト10に度々載っている。「終わった人」とはいかにもドラマ的な題だ。同じ頁に「売れている本」として『終わった人』の書評。 エッせシストの宮田珠己が担当」している。

「なんとも不穏で気になるタイトルだ。このタイトルで本書を手に取った人も多いのではないだろうか。ここでいう「終わった」とは、定年を迎えた、もしくは社会の一線から退いたという意味だが、もっと言えば、もはや社会に必要とされていないということである」 この冒頭の文を読みながら私の周囲の初老の男たちをおもう。

 ♥ 散らぬまま枯れゆく黄色のバラがあり貴方にはもう肩書がない、

 「主人公は、東大法学部から国内トップの銀行に就職したサラリーマン。順調にキャリアを積み、役員になれるかと思った矢先に子会社へ出向させられ、そのまま転籍。この時点で主人公は「俺は終わった」という衝撃に襲われる。子会社には65歳までいられるものの、会社にしがみつくのを潔しとせず63歳で退職。本書はその後の主人公の右往左往を描く」

 ♥ 執筆を依頼されれば書くというまだ優等生なのか彼女は

 文芸の世界には年功序列はない、筈である。新しく発表する作品で勝負しなければならない。それなのに「過去の栄光にしがみつく」 新人賞やら大学院博士課程終了などと。何十年も前の栄光はすでに光を失っているのに。中古のブランドのバッグをありがたがる女たちを相手に自慢話をする。「依頼された原稿を書くのに追われてまして、。」

 いつまでも自分が社会に必要とされたりしないのだ。エリートなどといわれてきた人はプライドが高くて敬遠される。私は旅や文芸や園芸が好きな人と飲んだり食べたりするのが愉しい。「食べるのが好き、飲むのも好き、料理は嫌いな内館牧子」はわたしの理想の女性だが、昨年末に体調を崩し、今年の5月にも緊急入院とか、回復されたら『始まる人』と言う小説をぜひ書いてください。『終わった人』が『始まる人』になるように。

                7月18日  松井多絵子