「あら、池田はるみ」
新聞の1面は見出しを見るだけ、でも天声人語は読む女が多い。私もその一人である。これを読んでいれば、井戸端会議でインテリめいた顔ができる。クリスマスの今日はなぜかギロチンの名の由来からはじまる。そして「史上最も多く人を殺した武器」に話が展開する。世界に推計1億丁出回っているという銃器を設計したのはロシアのミハイル・カラシニコフ。字の読めない兵士に使いこなせる銃、その簡便さゆえに途上国へ流れ込み、世界で惨事を引き起こしている。それを悲しんでいた氏が94歳で亡くなられたらしい。
★手軽とふカラシニコフがあるゆゑにあああるゆえに子どもの兵士 (池田はるみ)
「あら、池田はるみ」 つらつらと天声人語を読んでいた私の前に不意に池田はるみが現れ驚く。彼女は今わたしの所属している「未来」の選者である。20年位前からのおなじみの1人だ。短歌研究新人賞を受賞し、キラキラしているが、気安く話せるひとだ。関西弁を詠み込んだおもろい歌が多い、こんな深刻な歌も詠んでいたとは。今月の「未来」に次のような池田はるみの歌がある。8首連作の「十六夜」のなかから私の好きな2首を抄出。
★わたくしにはげしき父が在ましきよ家族と共に墓参りせむ ※家族(うから)
★こはかつた父の話をしてわらふ黒装をした一族があり
わたくしにうるさき父が在ましきよ、墓参をせぬと怒りているらん
12月25日 松井多絵子