「恋文大賞は~月の沙漠~」
☁ 孤独とは砂漠のことだと思います、サハラより日本へハガキ一枚 (松井多絵子)
第4回{恋文大賞}の優秀審査員賞は「月の砂漠」。 ありがとうという思いを伝えたい後藤さとみの「手紙」は、約5000通のなかから選ばれた。後藤さとみ(57)は小学校の校長らしい
~✿ 死んだ父は「月の沙漠」という歌が好きでした。残念なことに尋ねたことがなかったので、今となってはその理由がわかりません。小学校の頃、日曜の朝になると決まって父は、私の部屋の真下にあるオルガンで、この曲をぶかぶか弾くのでした。~
日曜の新聞に掲載されている「月の沙漠」のこの冒頭の文を見て私は亡くなった父のことを思い出しました。父は若いころアメリカへ出張したときに見た広大な砂漠に魅せられたのか、お酒を飲むと又始まったと家族が笑うほど砂漠の話。いつのまにか私は洗脳されて少女期にアラビアンナイトを愛読しました。いまでも旅のDMの砂漠ツアーの誘いに悩まされています。
~✿「これは朝らしくない歌だけど、このさびしい感じは何だか日曜に合っているのかも~
と後藤さんが思われる気持ちがよくわかります。休息することは淋しいことですものね。お父さまが癌で亡くなられ、告別式で「月の沙漠」を流し、春にしては空が真っ青に澄んで美しかったそうですね。~✿父はひとりで、どこまで行ったのでしょう。黙ってとぼとぼと、らくだに揺られてどこに行ったのでしょう。お姫様がいっしょでなくて、きっとさびしい旅かもしれません。~この最後の段落はわたしの砂漠に連なってゆきます。
☁ まなうらよサハラ砂漠の風紋をあの線描を忘れてはならぬ
12月2日 松井多絵子