ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

After You’ve Gone Ⅲ

2013-10-09 13:07:33 | Weblog
テンションの考えかたには色々ある。というか、テンションという音楽用語自体がジャズの世界のものなのだ。基本的には和声の機能を変えずに加えられる音のことだ。だから倍音列という自然現象が大きく関わってくる。倍音があまり出ないというか、基音のピッチが聞き取りやすいものを楽器の素材として音楽に使っているわけで、だから楽器によって出る倍音の量はかなり違う。個人差もある。具体的には奇数倍音の量に大きく左右される。ここでテンションのいわば「使用ルール」をどう設定するかという問題になってくる。上のほうへ行くと倍音は全ての音が発生しているという事実もある。でも音楽のルールとしてそれを全部許していたら収拾がつかないのだ。だからどこかで線引きをする。内声にトライトーンを含まないコードは9度、11度、♯11度、トライトーンを含むものは、4度と長7度音以外は許す。音楽を作るのに許すもなにもないのだが、この言葉にかみついていたらテンションというジャズのルールの真意が分からなくなってしまう。どんなルールにも特例はある。それは人間社会の常識だ。だけど、誰が発案したでもなくみんなの合意で決まったものというのはそれなりに価値があるのだ。いわば音楽の「道徳」だ。だから一応テンションのルールに則ってサウンドを組み立て、そのあと「特例」を考える。そうしないと最初からなんでもありでは混乱するだけだ。でもルールを絶対のものと考えて融通がきかないのも困る。音楽の決まりは知ってなければだめだけど、あまり縛られるのもよくない。ルールの本質を理解して柔軟に対応するしかないのだ。


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