曲を演奏するのには、もちろん細かいアナライズが必要ではあるが、おおまかな感覚で捉えることも重要だ。それがいわばインプロヴィゼーションの感覚でもある。この曲の場合、Aの部分はひとつのトナリティー、Bの部分も最初の4小節は平行調に移っているだけ、その次の2小節が元来のトナリティーからはずれるだけだ。もちろんひとつのトナリティーとは言ってもコードは変化するし、そのあいだには12個の音がいろいろ散らばって出てくる。ピアニストはその音はミスなく押さえなければ音楽にならない。でもインプロヴィゼーションの感覚はちょっと違うのだ。この曲でいえば32小節のうちBのサビの部分の後半、それも2小節だけが「どこか」へ行く感じ、そういう感覚も大切にしたほうがいい。この曲のようなバラードフィーリングだと時間的にゆっくり進むから細かい音使いも気になる。それはそれでちゃんとアナライズしないと穴が目立ってしまう。でもそういう感覚と並行しておおまかなトナリティーを感じるということも大事だ。そうするとコードネームだけを追っかけるみたいな演奏から脱出できる。いわばアドリブのコツだ。そうすると幹音と派生音、もとのスケールの音とそれ以外の音の違いもかえって明確に捉えられるし、より客観的な耳でインプロヴィゼーションを演奏できる。ジャズはみんなで即興的に作っていく音楽だから、全体像を感じながらやるというのはとても重要なことなのだ。
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