ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Tenderly Ⅱ

2009-09-18 00:07:24 | Weblog
3小節目に現れる長3度の下行は、ピアノの鍵盤だと長3度だけど、人間が歌うとそれよりも少し幅が広くなる。そのほうが音楽として自然に感じ、それを正しい音程として受け入れてしまう。この時ピアノと歌とはピッチがずれているから、物理的にはビート音といわれる差音が発生しているかもしれない。でも全然気にならない。音楽を聴く耳というのはそういうものなんだ。もちろん訓練として、歌手や管楽器、弦楽器奏者は正しい音程をキープする練習をやる。当然必要だ。でも細かいピッチのずれは音楽には当たり前のことで必要以上に気にする必要はない。オーケストラのピッチのずれをほとんど気にしない一流の指揮者もいる。説得力のある音楽、それが音楽家にとっての最重要課題だ。ボクはいつもピッチの確定した鍵盤を弾いていて音程について不思議なものを感じる。音楽に使われている「音程」というのはどういうものなのだろう?まわりが柔らかい弾力性のある素材で中には強固な金属が通されている。そういうイメージを持っている。組織としての音楽は12音平均律しか今のところ考えられない。それ以上の複雑さを持つと不都合なことが多すぎる。でもその周りにあるもの、つまり人間の感じる「歌」は無数の可能性がありどんな小さな音程も使える。そしてそのふたつのものが共存しているのが今の音楽の世界だ。


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