ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Alone Together Ⅲ

2011-02-05 01:03:28 | Weblog
スタンダード曲をいろんな種類の楽器編成で演奏するというのは、ジャズの世界ではごく普通のことで日常的に行なわれている。ジャズの世界というか今はカヴァーという名前でポップスの世界でもいわば何でもありだ。やはり良いのも良くないのもある。まあほとんどは単に奇をてらったものだ。音楽を演奏するのに一番区別すべきものはやはり歌のためのものか楽器のためのものかということだ。もちろん歌のための音楽の方が断然歴史は古い。楽器だけのために音楽がつくられはじめたのは数百年前だ。人間の声だけでは表現できない芸術としての音楽を演奏するために作られはじめた。その裏には楽器自体の質の向上という理由がある。ピアノはその最たるものだ。現在のピアノに近いレベルのものが生産され始めた頃からピアノのためだけの曲が作られはじめた。そしてピアノ音楽として確固たる地位を築いた。今も輝いている。ショパンやドビュッシーに代表されるこのピアノ音楽は他の楽器、ヴォーカルに置き換えるのは難しい。あまり成功しないのだ。それは平均律というシステムとピアノ独特の波形にある。そんなことは分かっているのに音楽産業にはいろんなものが出現する。まあでもこんなことは今に始まったことではない。何百年も前から大作曲家の名曲をカヴァーするという行為はさかんに行なわれていた。シンフォニーをピアノ曲に、ピアノ曲を弦楽曲に、声楽曲をピアノ曲に・・・。ほとんどは失敗するが、ごく稀にラヴェルのように後世に残るようなカヴァーを作るひとも現れる。いちがいに否定はできない。「フェイク」、この言葉が良く響くか悪く響くか分からないがこの言葉はジャズ独特のものではなく、音楽が古来からもっているいわば創造の源なんだ。


コメントを投稿