ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Pres And Teddy Ⅱ

2007-10-21 23:44:54 | Weblog
このアルバムを聞いていると、音楽の新しさというのは何なのか?と、考えてしまう。音楽を演奏する時の心構えはとにかく「Now's The Time」だ。これはジャンルに関係ない。ルービンシュタインもショパンを弾く学生に同じことを説いていた。年代によって音楽のスタイルは確かに変化してきた。じゃあ古いスタイルの音楽が古臭く聞こえ、今のスタイルの音楽が新鮮に聞こえるかといったらそうともいえない。やはり新鮮でいいサウンドを出すためには、それなりの腕と心構えが必要だ。ボクは世代から言ってもスウィングスタイルの音楽はあまりなじみがない。でも勉強だと思って、拒否せずにある程度の研究はした。そういうスタイルの先輩ミュージシャンとも仕事してきた。でもあまり感じるところがなくて、好きにはなれなかった。20数年前だけどアメリカ人の友達に紹介してもらった年配のピアニストは完全ないわゆるスウィングスタイルのピアニストだった。もう年齢は70歳を超えていたと思う。日本に数ヶ月いただけだったけど、その時六本木のクラブでやっていて最初聞きに行って素晴らしいと思い、その後何度も行った。聞きなれた古いナンバーを古いスタイルでやるんだけど、なぜかいいんだ。それまでに聞いたことのない感じだった。とにかくピアノから本物のジャズの香りがプーンとする。リズムがシャープでよどまない。もしかけだしの頃この人のプレイを聞いていたら、こういうスタイルを追っかけたかもしれない。スウィングスタイルというものが理解できたような気がした。音楽のスタイルというのは、深い理由があって成り立っているんだ。それを分からないでマネしてもだめだ。そして演奏する時のこころ構えは「Now's The Time」。音楽家は今は今のスタイルで今感じる音楽をやるしかないけど、守るべきはその演奏に臨む心構えだけで、スタイルという「結果」は他人の評価に任せておけばいいんだ。この意見にはプレスもきっと賛同してくれると思う。