ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Pres And Teddy

2007-10-19 17:33:18 | Weblog
レスターヤングが元気だったのは'30年代から'40年代で、このアルバムが録音された'56年というと亡くなる3年前、体は元気ではなかったようだ。でもこの頃は録音技術も良くなって、ヤングのサックスサウンドの良さがよく伝わるし、いいサイドメンに恵まれて気持ち良さそうに吹いている。いいアルバムだ。レスターヤングという人は、プレス(大統領)というニックネームが示すようにミュージシャンの間では最高の才能の持ち主として尊敬されていた。若いチャーリーパーカーがプレスのレコードを研究して一皮むけたというのは有名な話だ。バードはモダンジャズの基礎を作り世に広めたけど、プレスはいわばその基礎のもうひとつ基礎を作った人だ。このアルバムでピアノを弾いているテディウィルソンはベニーグッドマンのバンドにいた人で、スタイルはいわゆるスウィングスタイルのピアノだ。ドラムのパパジョーはカウントベイシーバンドの重鎮でジャズ界のボスだ。実際に録音されたのはすでにバードが死んだ後ではあるけど、このアルバムはいわばモダンジャズが生まれる下地を作った巨人の集まりでもあるんだ。よく聴くとモダンジャズという音楽が簡単にふって湧いたように生まれたものではないことがよく分かる。プレスの音使いは本当に「モダン」そのものだ。録音は確かに古いけど、音楽は決して古臭くない。