あぁ、湘南の夜は更けて

腱鞘炎やら靭帯断裂やら鎖骨骨折やら…忙しいッス。
自転車通勤往復100kmは、そんなこんなで自粛してました。

『KAYA インドで出逢った女の子(3)』 印度旅行記-その12

2005年01月03日 | 印度旅行記
真理とKAYAがバンコクへ発つ日が近づいてきた。

前にも書いたが、僕は生水を飲んで倒れてしまった。
生水は慣れていたはずだったが、同じ夜に同宿の旅行者2人が病院に運ばれていったので、
赤痢かチフスだと思った。
40℃近い熱と、下痢と嘔吐でのた打ち回った。
倒れて3日目の朝7時、真理とKAYAは部屋を出て行った。
オレンジを置き土産に「See You.」と言ってバンコクへ行ってしまった。

いつの間にか一緒にいて、一言「See You.」と去っていった真理とKAYAはまるで
空気のようだった。
空気がなくなると苦しいもので、僕は一層のた打ち回った。
KAYAが眠りに就いたあとで、僕らはいい話をいっぱいした。
彼女は遅れてきた全共闘世代。彼女は僕の教師だった。
彼女は僕に考え方を教えてくれた。生き方を教えてくれた。
そしてガンジャの吸い方と世界の見方を教えてくれた。
KAYAは神様だったし、真理はMariaだったのだ。

真理とKAYAが僕の前から消えてしまった日、僕は自分の身体を諦めてしまった。
そして楽になれた。
僕はカルカッタの街に出た。
そこで路上のメッセンジャーに出会い、啓示を受けたことは前に書いた(第7話)。
その後僕はカーリーテンプルへ行った。

カーリーとはインド女神の分身で、血と死体を好むというもの。
それを祀ってあるのがカーリーテンプル。KAYAがよく言っていた。
「ママはね、カーリーなんだよ。怒ると恐いし、月に1回血を流すんだよ。」
真理はMariaでなければ、カーリーだったのかも知れない。

昼寝をしていると、窓の外で「KAYA! Where’s KAYA?」という声がする。
もちろん、スルタナやロッシーナたちがKAYAを呼ぶ声。
宿のマスター、ミルクティ(僕らには彼の名前が聞き取れず、そんな風に聞こえた)が
悲しそうに声をかけている。
「KAYAは日本に帰ってしまったよ」と。
そう、真理とKAYAは日本に帰ってしまった。
その日本は僕が帰る日本とは違うのだろう。
僕は変わっていくと思う。変わらなくちゃと思った。
スタイルじゃなくてスピリットを変えていくのだ。
そして、もっと素敵になれた時、インドのどこかでまた会うことができるだろう、と。

カルカッタを夜行で発つ日、僕はスルタナたちのところに遊びに行った。

スルタナは妹と2人、ベッド(木枠に縄が張ってあるだけ)の上で食事をしていた。
スルタナがノートを持ってきた。
そこにはKAYAの悪戯書きが…。
スルタナはKAYA宛てに手紙を書いて僕に渡した。
僕は、今のままでは真理とKAYAに会えないと思っていた。
いつまで僕はこの手紙を持っていなければならないのだろう…、そう思っていた。
実際は帰国後に会えたし、インドの時以上にいい思い出や仲間を作ることができたが。

真理とKAYAは愛されていたのだ。

日本の常識からするとどうだろう。
28歳、離婚、6歳の一人娘の学校を休ませてインド放浪(3ヶ月)。
「学校教育だけが教育じゃない。でも仕方ないから。」なんて言って、
誰彼同じ方法で子供を育てる日本の社会にあって、彼女は変わり者と見られるだろう。
親のエゴで育てられるKAYAは可哀相、そう思われるかもしれない。
けれどここでは素敵な人たちだった。
旅の途上、特にインドの大地では人を判断するのはその人間の出来だけ。
裸の人間の勝負になる。
学歴や経歴なんて意味ないもんね。それはただその人の上に着せる衣装。
「学校はどちらを出ましたか?」なんて意味のない質問。
そんなことを聞いて相手を判断する人は、一体どういう人なのだろう。
とにかく、真理とKAYAは他の多くの旅人たちと共に愛されていた。
風のように生きている人々は本当に素敵だった。
僕は今でもこう思っている。
彼女たちは僕に生き方を見せるためにインドにやってきた、と。

親のエゴで:
真理のように子供を育てるのが親のエゴならば、
いわゆる「普通」に育てるのもエゴだと思う。
子供が何を必要としているのかは誰にも分らないから、
親は親の価値観の中で子供を育てていくしかないような気がする。
親の価値観ってやつがない場合、世間のくだらない常識を押し付ける。
それはさらにエゴのような気がする。
結局は他の人の生き方を自分の価値観で決め付けないことだと思う。
スクエアな枠(常識)を持ち出さないことだな。
サリンジャーの短編「テディ」(ナインストーリーズ収録)の感覚かな。

(wrote in 1990)

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