とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

新国立劇場「ことぜん」シリーズ『どん底』を見ました

2019-10-21 10:10:01 | 演劇
作 マクシム・ゴーリキー
翻訳 安達紀子
演出 五戸真理枝
キャスト 立川三貴 廣田高志 高橋紀恵 瀧内公美 泉関奈津子 堀 文明 小豆畑雅一 伊原 農 鈴木亜希子 谷山知宏 釆澤靖起 長本批呂士 クリスタル真希 今井 聡 永田 涼 福本鴻介 原金太郎 山野史人

 「ことぜん」について芸術監督・小川絵梨子さんは次のように説明しています。

 「ことぜん」とは個と全という意味合いで、個人と国家、個人と社会構造、個人と集団の持つイデオロギーなど、「一人の人間と一つの集合体」の関係をテーマとしています。  
 閉塞感ある全体主義やその圧力に取り込まれる「個人」。しかしながらその「個人」が集まり「全体」を創りだしてしまう......。そんな切っても切れない個と集合体の関係性や、相互作用、その中での軋轢や葛藤を、三人の演出家がそれぞれの作品でそれぞれの視点から描きます。
 
 個人と全体というのはわれわれ人間が生きていくのに大きなテーマです。それを切り取りシリーズのテーマとしたことがおもしろい。期待します。

 その第一弾が『どん底』です。ゴーリキーの作品ですが、その存在すら忘れていた作品です。見るのも初めてです。ロシアの貧しい人たちを描く作品です。貧しさの中で救いのない生活を強いられる人々が描かれます。そんな救いのない生活の中で諦めつつも、それでも救いの可能性に心が揺れます。微妙な心の動きが丁寧に描かれていきます。

 演出上の大きな特徴は、この舞台を日本の工事現場に置き換えて、工事現場で『どん底』を上演しようとしている人々として描いていることです。つまり、観客は劇中劇としての『どん底』を見ていることになります。現代の日本は裕福だとは言え、格差が広がり、未来の見えない人たちも多くいます。現代の管理社会になじめない人たちもたくさんいます。あきらめつつあきらめきれない人たちは、『どん底』の登場人物と重なってきます。しかし、重なりつつ重ならない。だからこそそれぞれの人間がさらに際立ってきます。おもしろい発見です。

 新国立劇場でなければやれない企画です。すばらしい仕事だと思います。

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