作:別役実、演出:加藤拓也、出演:堤真一、溝端淳平、藤井隆、野間口徹、小手伸也、中谷さとみ、高田聖子という豪華絢爛の公演『カラカラ天気と五人の紳士』を見ました。笑いながら、怖い世界に突き進む作品でした。傑作です。
昔、NHKの「おかあさんといっしょ」の中で、週1回「おはなしこんにちは」というコーナーがありました。その中で不思議な童話が読まれます。子供のころ私はそのコーナーが大好きでした。中学生か高校生になり、図書館に行くと『淋しいおさかな』という童話集がありました。そしてその童話集に「おはなしこんにちは」の童話が載ってのっていたのです。そしてその本の作者が別役実さんでした。
そこから私は別役実さんのファンになりました。別役さんが劇作家で、不条理劇を書いていることも後から知りました。別役さんの不条理劇は難解なものが多く、よく理解できいことが多かったのですが、学生で東京に住んでいたころ、何度か見に行きました。やはり難解で、しかも静かな演劇で、別役さんの芝居からは遠ざかっていました。「不条理」という言葉はよく耳にしますが、実感としてなじまないことが多く、ベケットなどもよくわからないままでした。
しかし年を取るにしたがって不条理が少しずつ実感できるようになってきました。人生は不条理です。理屈通りに行くことなんかありません。不条理の中で生きていくしかないのです。というよりも本来人間の生きていく意味などないのです。生きていくというのは死を待つための暇つぶしでしかないのかもしれないのです。
この芝居も笑いが絶えません。昔見たコント55号のコントみたいです。しかし、私たちが真面目にやっているつもりの毎日の仕事や生活も、実は宇宙人から見たらおかしなことにしか見えないでしょう。この芝居はそのことに気付かせてくれます。
残りが少なくなってきている自身の人生、これから何をしていくべきか、そんなことを考えさせられてしまいました。
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