とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

古典の参考書第3回 「いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に」1

2022-01-22 16:11:34 | 国語
 いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。

【源氏物語】
 説明するまでもないでしょう。源氏物語の冒頭の一文である。

【品詞分解】
いづれ   代名詞
の          格助詞
御時       名詞
に          断定の助動詞・連用形
か、       係助詞
女御、   名詞
更衣       名詞
あまた   副詞
候ひ       ハ行四段活用・連用形
給ひ       尊敬の補助動詞・ハ行四段活用・連用形
ける       過去の助動詞・連体形
中          名詞
に、       格助詞
いと       副詞
やむごとなき      形容詞・ク活用・連体形
際          名詞
に          断定の助動詞・連用形
は          係助詞
あら       補助動詞・ラ行変格活用・未然形
ぬ          打消の助動詞・連体形
が、       格助詞
すぐれ   ラ行下二段活用・連用形
て          接続助詞(または「すぐれて」で接続助詞)
時めき   カ行四段活用・連用形
給ふ       尊敬の補助動詞・ハ行四段活用・連体形
あり       ラ行変格活用・連用形
けり。   過去の助動詞・終止形

【現代語訳】
 いつの帝の御時代であったでしょうか、女御や更衣がたくさんお仕えなさっていた中に、とても高貴な身分ではない方で、(桐壺帝により)格別に寵愛されなさった方(=桐壺の更衣)がいた。

【断定の助動詞「なり」の連用形「に」について】
「にか」「やむごとなき際にはあらぬが」の「に」は断定の助動詞「なり」の連用形です。
断定の助動詞「なり」は「り」で終わる助動詞だから、推測できると思いますがラ行変格活用型の活用をします。「なら、なり、なり、なる、なれ、なれ」です。ただし、連用形に「に」が加わります。ナリ活用の形容動詞と同じ活用になります。
さて、この連用形の「に」はどういうときに使われるのでしょうか。
もともと断定の意味は「に」にありました。現代語における「だ(で)」と同じです。そこに「ある」が加わり、「である」という言葉が生まれたのです。古代語でも「に」に「あり」が付き、「にあり」から「なり」が生まれたのです。ということは多くの場合、「に」のあとに「あり」がある場合は、その「に」は断定の助動詞「なり」の連用形だと判断してよいのです。
にはあらぬ。
にしもあり。
にこそあれ。
にやあらん。
にかあらん。
などの例の「に」は、ほとんどの場合「断定」の助動詞「なり」の連用形です。(場所を示す格助詞の「に」の可能性もあります。)
 この中の「にこそあれ。」は「にやあらん。」「にかあらん。」は頻繁に使われるために、「にこそ」「にや」「にか」と省略されることがよくあります。ですから。
 にこそ。
 にや。
 にか。
の「に」も断定の助動詞「なり」の連用形と考えます。これを「結びの省略」といいます。

(つづく)
コメント
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