監督 深田晃司
出演 筒井真理子 市川実日子、池松壮亮、吹越満
日常の影にはさまざまな人間の表にでない心がある。その心があるきっかけから次々と表に出てしまい、悲しい現実が訪れる。しかしその現実から逃げるわけにはいかない。現実を受け止め、現実をあきらめ、そして現実を戦いながらも生きるしかない。そんなやるせなさが描かれる。
主人公を演じるのは筒井真理子さんである。劇場で偉そうな高慢な女をコミカルに演じていた印象ばかり持っていたが、細かな表情や行動の変化を表現し、すばらしい演技だった。映画向きの女性であったのだなと感心させられた。
筒井さん演じる主人公が、執拗にせまるマスコミに「私は私に恥じることはしていません。」と言う。このセリフが強さと不器用さを感じさせられた。誰かのせいにするわけではなく、自分で抱えていくしかない。その決意は強いが、しかし誰かに助けてもらいながら生きていくほうが楽だ。自分で抱えていくしかない生き方こそが、人間を追い込んでいくのだ。
真面目に生きていても、ちょっとしたことで歯車が狂い、そして大きな悲劇に結びついていく。そんな日常の恐怖を描いた映画だった。いい映画である。