まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

Q.多様な価値観の共存はできるのでしょうか?

2016-06-18 18:39:26 | グローバル・エシックス
今日は 「看護教員養成講座」 のほうでいただいた質問ですが、
内容的には福大の 「倫理学概説」 のほうでいただいたとしてもおかしくなかったような質問です。
多様な価値観の共存というのはまさに私の倫理学の根本問題といっても過言ではありません。
正確には次のような質問でした。

Q.教育方法の中で「プラグマティズム」を用いたデューイの教育論を学びましたが、
  多様な価値観の共存はできるのでしょうか?
  宗教的な対立はなくすことができるのでしょうか?

「教育方法」 を教えてくれているのは福大のS先生でしょうか?
S先生とはよく一緒に飲みに行ったりする仲なんですが、
あんまり真面目な思想家の話とかしたことありませんでした。
S先生、デューイなんか語っちゃうんですね。
今度ゆっくり話してみたいと思います。

さて、「教育方法」 のなかでデューイのどんな話を聞いたのかわかりませんので、
今日はデューイのことは置いておいて、多様な価値観の共存という点に絞って書いていきます。
デューイの社会論、政治論ということで言うと、
ネットで簡単に見つかる次の論文が参考になりましたので、興味があったら見てみてください。

野村紘彬 「トランズアクションの概念とジョン・デューイの公衆論
      ――『公衆とその諸問題』に示された民主主義論の前提――」


多様な価値観は共存できるのか?
宗教的な対立はなくすことができるのか?
この問いには端的に次のようにお答えしておきましょう。

A.多様な価値観は共存できます。
  宗教的な対立はなくすことができます。

実際に皆さんのご家族親戚のなかや、職場のなかでは多様な価値観が共存してはいませんか?
また第1回のときにも話したように、日本ではさまざまな宗教が対立せずに、
みんな12月にはクリスマスを祝い、年が明けたら神社に初詣に行き、
お盆には (お盆に限らず) お寺に墓参りに行ってるじゃないですか。
まあここまで諸宗教が対立せずにうまいこと同居してしまっているのは、
世界的に見ても日本くらいのものですが、
それでも、世界史のなかで血で血を洗う凄惨な戦いを繰り広げたカトリックとプロテスタントは、
今やほとんどの国で何とか共存してやっていっているじゃないですか。
したがって、宗教的対立をなくすことはできないなんて悲観する必要はないと思うのです。
もちろん現在も宗教的対立に発するテロ行為は世界中で起こっていますが、
その現状を見て、共存なんかできない、対立をなくすなんてムリと即断してはいけないと思います。
以前に、以下のような質問をいただいてお答えしたことがあります。

「Q.人はなぜ争い続けるのか?」

ぜひそこに書いたことも読んでみてください。
けっきょく本能ではなく文化の問題だと思うのです。
人間は、対立を強め、排除し合い、争い続ける文化を作ることも可能ですし、
対立を乗り越え、互いの存在を承認し合い、ともに共存していく文化を作ることも可能です。
人類がどちらを選ぶのかという選択 (=自由) の問題であり、
子々孫々にいずれの文化を伝達していきたいかという教育の問題であると思います。

たしか前回、「問いの力」 ということをお話しさせていただきました。
その話に絡めて言うならば、この問題に関しても問いの立て方が大事だと思います。
多様な価値観は共存できるのか、宗教的な対立はなくすことができるのか、と問うのではなく、
また、なぜ多様な価値観が共存できないのかとか、
なぜ宗教的対立はなくせないのかと問うのでもなく、
どうやったら多様な価値観を共存させることができるのか、
いかにしたら宗教的対立をなくすことができるのかという形で問いを立て、
その問いの答えを探る方向でロゴス (言葉=理性) を使っていけばいいのだと思うのです。

実は哲学史上、カントとデューイの思想は対極にあると言ってもいいくらい対立しています。
デューイのプラグマティズムとか道具主義という立場は、
カントを意識しつつわざとカントが忌み嫌った言葉を選んで組み立てられていると言っていいでしょう。
その対立のなかで、私はあくまでも自分のことをカント主義者だと思っていますが、
しかし、今日書いたようなことはそこはかとなくデューイの立場に近づいてしまっています。
どうです、私のなかでみごとに対立する価値観が共存しているじゃないですかっ!
多様な価値観が共存することはできないなんて豪語している人にはこう言ってやりたいです。
「まさおさまを見よ!」

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