まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

戦争の定義に関するFAQ・その2

2011-01-18 20:35:02 | 哲学・倫理学ファック
「Q.正直、武力を使うよりもインターネットなどのコンピュータの方が現代では武器になる気がするのですが、コンピュータを使った戦争は戦争になりますか?」

「コンピュータの方が武器になる」 というのをどういう意味で言っているのかがよくわかりません。
現代の武器はたいていコンピュータ制御になっていますので、
コンピュータ抜きの戦争というのはもう考えられないでしょう。
でも、質問者は 「武力よりもインターネットなどのコンピュータの方が」 という言い方をしているので、
コンピュータ内蔵の武器の話をしているのではないでしょうね。
ただのコンピュータが武器になるというのはどういうことでしょうか?
例えば、トム・クランシーの 『日米開戦』(文春文庫) では、
ウォール街のメインコンピュータにウィルスを送り込んで、
アメリカの経済システムを崩壊させるという物語を描いていました。
たしかにこういう攻撃は、普通の武力による攻撃よりもはるかに相手国に対して破壊力がありますし、
やられたほうからするならば、たしかに戦争行為と思えるかもしれませんが、
これを戦争と呼ぶのはどうでしょうか?
戦争とは別の言葉をあてておいたほうがいいように思います。
例えば 「サイバー・テロ」 とか 「サイバー・アタック」 ぐらいかな。
『ダイ・ハード4.0』 もサイバー・テロを描いていましたね。


「Q.自衛隊の自衛による武力行使は戦争ですか?」

これは難しい問題です。
私の個人的な考えを述べるならば、自衛隊は軍隊であり、
自衛隊が自衛のために武力行使をすればそれは戦争 (自衛戦争) であると思います。
というか、普通に考えてそれ以外の答えはありえないと思いますが、
日本の法律論議のなかでは、これまでその普通の答えがなかなか市民権をもてずにきました。
憲法第9条との絡みで、9条が紛争解決の手段としての戦争と武力行使を禁じ、
陸海空軍その他の戦力の保有を禁じているなかで、
自衛隊は合憲か違憲かという問題がこれまで幾度となく提起されてきましたが、
これに対してはっきり違憲だという結論に落ち着いたことはありません。
なので、今のところ日本の公式な答えは、
自衛隊による自衛のための武力行使は戦争ではない、ということになっているのでしょう。
しかしながら、そう主張する人たちの多くは改憲論者で、
憲法第9条を改正し、自衛隊を自衛軍に改めるべきだとも主張してしまうわけですから、
それは裏を返せばやはり、自衛隊は軍隊であり、自衛隊の武力行使は戦争である、
と本音のところでは認めているということになるのではないでしょうか。