新宿少数民族の声

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1月19日 その2 英語の言葉の分類を考える

2018-01-19 13:38:25 | コラム
前嶋教授はshitholeを放送禁止用語と表現したが、あれは swearwordである:

“swearword”は「汚い言葉」と訳されていることもあるが、どのような分類の仕方があるかということや、如何なる言葉であるかや、それを使うことが如何なる結果を生じるか等については、我が国の学校教育では教えていないようだというのか、避けて通っているかの印象がある。是非とも覚えて置いて頂きたい事は「slangとは別個な分類になること」だ。

であるが故に「これがその言葉である」と承知している人は極めて少ない。だが、その中には「あっつ、それなら聞いたことがある」と誰しもが言いそうな代表的な言葉もあるとまで、ここでは申し上げるに止める。

実は、18日のPrime Newsにゲスト出演した上智大学の前嶋和弘教授は、トランプ大統領がハイチを形容する際に使った、マスコミが何を考えたのか「野外便所」と訳してしまった shitholeを「放送禁止用語であり、何か別の音でもかぶせて聞こえないようにすべきを(俗に言うモザイクをかけるというのと同じ事)そのまま流してしまった」指摘していた。

彼はswearwordであるとは直接には言わなかったが、shitholeは立派な?swearwordであり、到底知識階級は言うに及ばず、アメリカの大統領が公開のテレビカメラが入った場で使うべき言葉ではなかったと指摘したのだ。その通りであると思う。

恐らく、私が知る限るあの言葉を使うべきではないとズバリと言ったのは前嶋教授だけで、マスコミなどは知ってか知らずにか「野外便所」などととんでもない誤訳をしたままである。Oxfordには「汚いか不愉快な場所」と出ている。便所などとは言っていない。ジーニアス英和には「不潔な場所」とある。いや、彼らは学校で教えられていなかっただけで、罪はないのかも知れない。だが、絶対に注意して間違っても使ってはならない言葉であると断言しておく。

さて、汚い言葉、即ちswearwordとはの解説に入る前に、是非ともこの言葉についての私の思い出を採り上げておきたい。

私が1972年8月に生まれて初めてアメリカに出張し、帰路はカナダ西海岸のヴァンクーヴァーからとなった。そこで母親と家内に土産でも買うかと、空港の免税店立ち寄った。応対してくれた販売員はかなり高齢の日系の女性だった。これはと思った物が予算を超過していたので何気なく“Jesus Christ!”と口走った。

するとその販売員がキッとなって急に日本語に変わって「貴方は何という言葉を使うのですか。少しくらい英語ができるからと言っていい気になって汚い言葉を使うとは何事ですか。即刻お止めなさい。私は戦争中にここで育ったために日本語も英語も中途半端になってしまったが、それでもswearwordを使ってはいけないくらいは心得ています。これから先は絶対に使わないようにしなさい」と将に声涙ともに下る忠告を戴いた。私は言葉もなかった。肝に銘じた。

だが、それでも懲りなかったようで、1975年3月にW社に転身後にも東京事務所で日系人のJ氏にも会議室に呼び出されて「貴方の品格を下げる言葉を使うな」と厳しく戒められた。当人はそれほど頻繁に使ったつもりではなかったが、W社のマネージャーともあろう者が使ってはならないとあらためて言われた。

また、本社事業部の副社長にも彼のオフィスに呼ばれて「外国人のお前がswearwordをそれほど上手く使うのは聞いていて気持ちが悪くなる。今後私の面前では絶対に二度と使うな」と叱責された。

ここまでの三つのエピソードでswearwordとはどういう種類の言葉かお解り頂けたら有り難いと思う。即ち、苟も自分は知識階級に属すると自負されている方は絶対に公衆の面前で使ってはならないのである。極論的に解りやすく言えば、使った瞬間に「自分は下層階級の人間です」と告白したのと同じになってしまうのだ。少なくとも、日本式に言えば「一部上場の企業の管理職が使っては会社の格も下がるし、自分も下層の者だと名乗ったことになる」くらいに認識しておくべきだ。

だが、困ったことにそうとは知らずにアメリカ人の中に入っていくと、そういう言葉を日常的に使う人種に出会ってしまい、それが格好が良い言葉だと思って飛びついてしまう例が誠に多いのが現実だ。

これの定番的日本語訳はないだろう。私が好んで採り上げる使用例に「沢尻エリカの“Oh, shit!”」がある。そして、これは最も使ってはいけない言葉の一つである。Oxfordは“A rude or offensive word, used especially to express anger.としているが、これでは弱いと思う。Websterは”to swear”を“Use profane or obscene language.”としている。

私は当初はこれが何であるかという性質を知らずに覚えていた。だが、知らないのは恐ろしいもので、一旦覚えると何となく使ってみたい誘惑に駆られるものであった。これは戦後に駐在した占領軍の兵士たちが使ったために我が国で広まったのである。特に「ゴッダメ」=“God damn it.”がその代表格だっただろう。英語が何であるか良く知られていなかったあの頃には、我々が何の躊躇いもなくアメリカ人が使う言葉を真似していたと思っている。

何故いけないかは上に述べたように明かである。それは我々が所属した(大)会社の本社組織に属する年俸制の社員ともなれば、人前では使ってはいけないものなのである。それだけでは具体性がない。これを使うと、言いたいことを強調できるのだが、それが同時に「語彙の貧弱さ」と「無教養」とを表し「お里が知れる」ことになるのが良くないのである。例を挙げるが、それを見ればslangとは明確に一線を画していると解ると思う。

shit.=「チクショウ」か「何だよ」辺りになるだろうが、下品である。
bull shit=これも「コンチクショウ」であり「この野郎」にもなるだろうか。“horse shit”と言う場合もある。
He is a hell of a salesman.=「彼は凄腕のセールスマンだ」なのだが、このhell(=地獄)がいけないのだ。“hell of a driver”と言えば「運転が凄く上手い人」という具合だ。
God damn it! これも「コンチクショウ」で、日本語でも余り褒められない表現だ。
Jesus Christ. =「なんてこった」か「コンチクショウ」辺りが訳語だろうか。
fuck→日本語に訳すのも躊躇うような言葉。fuckingとも言う。
ass hole=日本語にも「何とかの穴の小さい奴」という表現があるが、それとは意味が違うものの、汚い言葉の代表格であろう。
Oh, brother. =「何としたことか」とでも言おうか、これも使用禁止の部類だ。

まだまだ他にもあるが、これくらいで十分だろう。私は「オーマイガッド」(=Oh, my God.)もそのうちだと解釈している。故に、もしも言いかければ「オーマイ」までで止めておくと良いと思っている。



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