新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの雇用の状況の考察

2018-01-19 08:07:07 | コラム
アメリカの失業率の中身:

我が国でも現在は有効求人倍率が上がってきているが、中には相変わらず人手不足に悩んでいる介護職のような分野もある。18日夜のPrime Newsでも古森義久氏はアメリカの失業率は4%にまで下がってきた良い状態だと指摘していた。

私は元の同僚で技術サーヴィスマネージャーだったL氏とアメリカの雇用の状況について、丁度1年前に意見を交換していた。L氏の意見には興味深い点があるので、あらためて紹介する次第で、下記のようなものだった。

>引用開始

我が国の大都市圏の労働市場には最早博士や経営学修士は不足していない。我々が最も求めており尚且つ不足しているのが十分な教育を受けた才能あるブルーカラーなのである。十分な教育を受けていなければ良い職(注:これはjobであって、トランプ氏の言われる雇用とは意味が違う)を得られず、動もすると失業し犯罪や薬物に走ってしまう結果を生んでいる」
との指摘だった。


<引用終わる

彼は私の在職中からこの件を言い続けており、その具体的な問題点はと言えば即ち、先ず垂直上昇して偉くなるこ可能性は先ずないポジションを望んで入社を希望する若者は少なく、その上に採用してみても堪え性がなく、直ぐにより高い給与を求めて転職する傾向が顕著だった。故に、会社側も育てる時間も取れずに“unskillful”な事務職しかおらず、また工場には管理職の補助的な技術者が育たないのだ。それだけでも人手不足を来たし、会社側の管理職の負担が激増するのであった。

彼の言いたいことは職、即ち仕事というか雇用を増やすことに意義はあるものの、嘗てカーラ・ヒルズ大使が指摘されたような初等教育の充実こそがブルーカラー等の層に求められているのだという点である。即ち、増やされていく職(雇用)がどの分野で働く人たちを求めているかが重要だということ。その質を高めることが、アメリカの製品の質を高め国際競争力を増すことに貢献すると考えた次第。トランプ次期大統領にも是非ご配慮願いたい分野である。

このL氏の意見とは一寸異なる意見を聞かせてくれたのが、昨年の春に一時帰国したSM氏だった。そのホワイトカラーと言うべきか管理職層の話は、私にとってもかなり衝撃的だった。それは「アメリカでは弁護士や医師は過当競争で今や生存競争が激化している。企業においても生存競争は激化する一方で、その中にあってはMBAやPh.D.を持っている方が生存競争に勝てる確率が高いという時代になった」というものだった。

ある30歳になったばかりの女性でUCLAでMBAを持つ者が既に管理職に任命されており、年俸は13万ドルで、その他に3~5万ドルのボーナスまで貰っているという話なのだ。これらの年俸を合計して円換算しても精々1,600~1,700万円にしかならないが、これはアメリカでは大変な高給の部類に入るのだ。彼女はその為に4年生の大学を終えてから一旦就職して実務の経験を積んでから、ビジネススクールに入学してMBAを取得したのである。

UCLAの例を挙げれば、州立大学でありながらカリフォルニア州が財政破綻した為にその授業料は今ではIvy Leagueの私立大学並みに上がっており、2年間の学費は総計で1,000万円にも達するのである。即ち、彼女は管理職になるというか、支配階層に入って職を確保する為に1,000万円の投資をしていたということだ。

これも容易ならざる生存競争の世界の話である。大手企業においてはそう多くの管理職というか、経営の責任を負う本部長や副社長の職に就く人材を必要としているわけでもないので、先ずはビジネススクールに入って出世街道に乗れるチャンスを狙える用意をせねばならないのだ。

しかも、何度も述べてきたように経営者は I don’t like you. などという簡単明瞭な理由の他に、管理職でも副社長でも、働きが悪ければ馘首する権利を持っているのだ。地位が上がり、年俸が増えるほど馘首される危険性が高まってくる世界であるとご承知置き願いたい。

そういうアメリカでは今やトランプ大統領の下に好景気を謳歌し、失業率が4%ギリギリにまで下がっている。だが、実態では激しい競争もあれば、人材不足を嘆いている分野もあるのだ。


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