新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月13日 その2 南海トラフの地震の臨時情報が出ていても

2024-08-13 09:34:07 | コラム
案外なことだった:

実は南海トラフの地震についての臨時情報は「何もなければ15日で解除」との報道があったので、もうそろそろ熱海の伊東園グループの経済的なホテルを月うちに予約して湯治に出かけるかと、昨12日に電話してみた。恐らくキャンセルが多くて空いているのではと、勝手に推測していたのだ。

ところが、当てが外れて意外にも素気なく「今月中は既に予約で満室」と断られてしまった。思うに当方と同じように「トラフに地震が来れば大いに影響されるだろう熱海は敬遠されているのでは」と見込んだ方々が既に手を打ってあったのだろう。残念だったが、諦めて15日まで模様眺めにするかと思案中である。

他の太平洋沿岸の保養地はどうなっているのだろう。富士山だってインバウンド様を含めて登山者が殺到していると言うから、地震が来ると信じていない人は再三再四の警報にも拘わらず、案外に多いのかな。

8月12日のPrime Newsから

2024-08-13 08:23:22 | コラム
「やる気がある社員は6%」の題目に惹かれた:

一寸長くなってしまったが、ご辛抱の上でお付き合い願えれば幸甚である。自分では後半が肝であると思っている。

昨夜はジャイアンツがタイガースに勝ってしまいそうな野球を敬遠して、Prime Newsを聞くことにした。要するに「日本の会社員の6%しかやる気が無く、中国・韓国・インドに引き離されていて、」調査した諸国の中で最下位だった」という事で「対策ありや無きや」と言いたいのだと受け止めた。ゲストはこの番組ではお馴染みのデイヴィッド・アトキンソン氏と渋谷和宏氏(元日経ビジネス)だった。期待はアトキンソン氏が何を言われるかにもあった。

番組の重点:
当方が受け止めた「何故6%と最低だったか」は、先ず20年以上もの間上昇していなかった低賃金が来て、次がアトキンソン氏で、彼は「日本の会社中に中小企業が占める率が90%超で社員数では70%超。その中小企業の賃金は大手の半分にしか達していない低さ」を取り上げていた。階層で見れば「上に行くほど手厚く、下がる程々低賃金になる」とも言った。アメリカなどでは90年の倍近くも引き上げられているのにということ。

アトキンソン氏はさらに「近年は社長の数が著しく増えてきた」と指摘。それに伴って取締役も増加するので、上に立っている者への給与ばかり増えている」とも言うのだった。私はホールディング・カンパニー制を採る会社が増えれば、そこに分離独立した会社が増えるので社長も役員も報酬も増えるのかと解釈した。彼の結論としては「これではやる気が出ない」とのこと。「何を今更」と感じるが、その通りだろう。

アトキンソン氏はその状況下でも企業は内部留保を積み増し続けて90年と比較すれば倍近く(だったか)も増加させ、一向に設備投資をせず、新規事業も出てこなかった点を改めて指摘した。このような状態からどうやって脱却するかだが、22年以上もアメリカの大手2社に勤務した経験から「どうすれば」などと大それた事を言うのではなく、アメリカとの比較を考えてみようと思った。

日本とアメリカの会社組織の比較:
嘗て、21世紀パラダイム研究会を主宰しておられた故上田正臣氏(元日本興業銀行常務、日軽金副社長)に「アメリカの企業での人事体制は事業部長の下に部員全員が横一線であって、彼等の間には地位や身分の上下は無い」と申し上げたことがあった。上田氏は「その体制が私の目指していたこと。興銀でも主張したが突飛で非現実的と却下されたのは残念だった」と回顧された。

如何なる意味かと言えば「アメリカの大手企業では新卒者を採用して教育して育てていき、同期間で競争させた結果で段階的に昇進させていくシステムは存在しないので、組織の中にあって自力で生存しようと努力するのであるし、係長→課長→部長代理→部長→事業部長→取締役のように順番で昇進する制度は存在しないのである。あからさまに言えば、多くの部員たちは専門職として中途入社してきた経験者であり、地位の上昇とは殆ど無縁の存在なのである。

即ち、近頃我が国でも云々されるようになった「job型雇用」で、即戦力として事業部長が必要に応じて採用された者たちの集団で、MBAで出世街道を目指して入ってきた精鋭たちとは異なる存在の者の集まりのである。何を隠そう、かく申す私もその一人だったのである。

そのjob型の各人は与えられた職務を一人でこなしていき、業績次第で高齢者になっても昇給していくが、地位は上がっていかないのである。しかも、与えられた任務は全て自分一人で対処するのだ。換言すれば「個人プレーの集合体が組織を構成している」のである。日本の組織では考えられない形なのである。各人が他人に頼ることも、相互に援助し合うことなど考えずに「自分に当たられた任務だけに集中していく」のである。

さらに我が国との大きな違いは「事業部長(GMで副社長である事が多い)本人も担当先と担当業務を持って自ら走り回りつつ、事業部全体の製造・販売・営業・総務・人事・経理・会計・福利厚生等々の全ての責任を負って活動する」のである。故に、VP&GMともなれば年俸は高くなるのが当然だが、その責任は非常に重く寝食を忘れてでも動き回らねばならない。我が事業部のGMも幹部のマネージャーたちも、1人を除いて離婚に追い込まれていた。

これを給与面で見れば、VP&GMが飛び抜けて高給でも部員たちはそれほどでもないのである。であるから、日本のように上位にある複数の役職者たちが高給を取っているという形にはならないようなのだ。ということは「最初からMBAを持って入って来て、スピードトラックに乗って地位と肩書きの上昇を狙うのではない、実務を担当する地位の上昇が無いマネージャーたちの一人一人の活躍が、アメリカの会社を支えているとも言える気がする。

それでは、アメリカの社員は「やる気」があるのかという点だ。自分の経験から言えば「やる気」と言うよりも、大袈裟に言えば「必死になってやらないと、何時なんどき“You are fired.”が襲ってくるのか解らない世界にいるので、自分の“job security”のために常に全力でなければならない」という「やらねばならない気」に満ち満ちていたのだった。だが、それを「やる気」の範疇に入れて良いかは解らないが。

我が国とは全く異なったアメリカのシステムを紹介することで「その良いところを取り入れたら如何」などと言う気などは全くない。但し、上田正臣氏も目指しておられた「一人の責任者の下に横一線」の人事体制は考えても良くはないかという気がする。アメリカ式に「何歳になっても地位は上がらないが、『禄を以て報いよ』の考え方で、年齢と実績に従って給与を上げていけば良いのではないか」という気もするのだ。

日本の会社組織に17年半ほどお世話になって勉強したので、その経験がアメリカの会社に転身しても「比較検討」出来るようになった。だが、同期や下の期の人たちとの、言わば出世競争と何人かの上役に評価されるように努める事に神経を使う生活は重苦しかった。アメリカの組織に転じてからは「同期」も下の者もいない出世競争が無い世界で、自分の身を守る為だけの働きをする方が気楽で「やる気」も出ていたようだった。

給与だが、年に一度の話し合いでは少なくとも「これだけは欲しい」と要求できる形が取られていることは、我が国の人事制度よりは良かったように思う。しかも、年俸は転進する前に採用権を持っている事業部長なりマネージャーと話し合って、それまでの職と経験に基づいて決められるのだから、納得した金額である。それが人事権者と話し合って入社後の実績で上がったり下がったり、据え置かれたりするのである。

ここで給与という点では「アメリカならではのこと」を紹介しておく必要があると思う。それは「会社全体の業績が悪化しても、それとは関係無しに事業部の業績次第と各自の働きが良ければ昇給していくことがある」点である。「そんな事があり得るのか」と疑問に思われるだろうが、事実だった。

ここまでが「異文化」の内容である。日本の会社組織に取り入れられる点があるだろうか。個人的には「学んでも良いかの点はあるが、非常に非現実的で、無理がある」のではないかと、感じている。自分で言い出したことではあるが。端的に言えば「貰えるものが一向に増えず、先行きの見通しも明るくなってこない情勢では『やる気』が出てこないのも当然では」と言いたくなる。