おはようございます。
11月の末、出光美術館の江戸絵画の文雅 /魅惑の18世紀に行ってきました。
さて、”文雅”とは?人々の世相や風俗を描く「俗」なる絵画の典型という印象とは裏腹に、古典をもとにした「見立て」を繰り広げた浮世絵。王朝の風雅に対する深い理解と憧れを、絢欄たる色彩に託した琳派。そして、「雅」なるものの象徴といえる文人画においては、漢文学に対する深い素養とともに、俳諧など「俗」なる文芸が混ざり合うことによって、日本独自の情趣性を帯びてゆきます。「文雅」をもとに、多様な展開を見せる18世紀の豊饒な絵画の競演をどうぞ。ということだそうです。
本展の見どころは次の四つということなので、それを念頭に置いて鑑賞しました。
1)文雅なる江戸絵画の名品を紹介
2)大雅と蕪村の二大競演
3)光琳・乾山兄弟が繰り広げる琳派の美
4)肉筆浮世絵、禅画もずらり
そして、次のような章立てですすむ。
第1章 孤高の美学/大雅・蕪村の競演
本展のメイン。蕪村の”微光”、大雅の”陽光”という解説があった。なるほど。”陽光”の大雅の山水図はまるでスラーの点描画のよう。でも、一つひとつの点がスラーのように単純ではなく幾色にも。蕪村の”微光”は、すでに展示期間を終えていた夜色楼台図(国宝)の方がわかりやすかったかもしれない。写真があったが、実物を見たかった。かすかな雪明りの家並みの図。
蕪村 山水図屏風(重文)一部

大雅 十二か月離合山水図屏風(重文)一部


大雅 竹裏館図

第2章 文雅の意匠/琳派のみやび
宗達、光琳、乾山の琳派作品が並ぶ。伝光琳”禊図屏風”(重美)は、川辺で禊(みそぎ)をする男、かなわぬ恋心を洗い清めようとする、伊勢物語からの取材と見なされている。ほかにもこれら。
伝光琳 富士図扇面

乾山・光琳(画) 錆絵菊図角皿

第3章 禅味逍遥
ここでは、ユーモラスな禅宗絵画が。教えを民衆に分かりやすく、広めるために描かれた。白隠さんやお弟子さんの作品。
白隠慧鶴 面壁達磨画賛

第4章 王朝文化への憧れ /見立ての機知
ここでは、見立紫式部等、見立て美人図が並ぶ。勝川春章”美人鑑賞図”は、美人を鑑賞するのではなく(笑)、美人が絵画を鑑賞する図。中国で文人の集まりを描いた雅集図の構成に倣ったもの。大型で、ひときわ目立つ作品。絵葉書を買ってしもうた。
勝川春章 美人鑑賞図

ほかにも、源氏物語屏風、酒呑童子絵巻、花車図屏風など華やかな作品がつづく。
第5章 幻想の空間へ /文雅の時代を継承するもの
18世紀の文雅の時代は、従来の絵画ジャンルにとらわれず、折衷的な新画風を確立した谷文晁や、大雅・蕪村を慕いながら、独創的な文人画風を創り上げた浦上玉堂らに継承された。
谷文晁 青山園荘図稿(部分)

文晁のアオバト(枯木山鳩図)も良かったね。全体に、楽しい展覧会でした。

あの日、美術館の休憩室から見た皇居方面の風景。

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!