ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその420-穴

2019年12月15日 | ヨーロッパ映画
張り詰める緊張感。

映画の作りは、アメリカ、ヨーロッパによって違いがある。
大仰な音楽で、シーンを盛り上げたりするのはアメリカ映画。
音楽が少なく、淡々とシーンを重ねていくのがヨーロッパ映画である。
ラストシーンも「ハッピーエンド」であるアメリカ映画に比べ、様々な形のヨーロッパ映画である。
今回紹介する映画は「穴」。
フランスの名匠ジャック・ベッケルの作品である。
ストーリーを紹介しておこう。

パリのラ・サンテ刑務所。
刑務所内の改装のために、ガスパールと言う男が房を変えて入所することになる。
新しい房には、既に4人の個性的な囚人が収監されていた。
しかし、この房では、密かに脱獄計画が進んでおり、新入りのガスパールも、その仲間になることになる。
計画は完璧で、地下水道への抜け道を、壁を突き破ることで、脱獄できることが分かった。
そして囚人達は、毎日その壁に穴をあけるべく深夜に行動を起こす。
そしてついに、最後の壁を破り、脱獄の手配は全て完了した。
早々に脱獄すべく準備を始めた彼らだったが..........

この映画は、脱獄にいたるための作業を、淡々と描いている。
同じ事を映画を観ている観客たちは、観させられることになる。
しかし、ここが良いのだ。音楽は一切劇中に流れず、そこにはピーンと張り詰めた緊張感と静寂感がある。
だから全く飽きることなく、この作品は観られるのだ。
同じような映画でロベール・ブレッソンの「抵抗」と言う映画があった。
あの映画も、静寂を絵に描いたような名作である。

この「穴」と言う作品、観る者を震えさせるような「緊張感」と「静寂感」では、映画史に残る傑作と言えよう。
果たして脱獄計画は成功し、晴れて自由の身に彼らはなれたのか。
それは、読者の皆様の目で確かめていただきたい。
まだ観ておられない方には、是非とも観ていただくことをお勧めする。
また、原作が、あのジョゼ・ジョバンニであることも、付け加えておこう。

1960年、フランス製作、モノクロ、131分、原作:ジョゼ・ジョバンニ、監督:ジャック・ベッケル