ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその227-スロウ・ウエスト

2016年05月24日 | ヨーロッパ映画
なかなかの出来栄えの一作。

愛とは、お互いに認識して生まれるものである。
勝手な愛名成立などない。
もし、それがあれば、お互いに傷つくものになろう。
今回紹介する映画は「スロウ・ウエスト」悲劇的な愛を迎える作品だ。

ストーリーを紹介しておこう。

19世紀のアメリカ。スコットランドの男性ジェイは、何も言わずにアメリカへ旅立った思いを寄せる女性を探しに、単身アメリカへ渡る。
しかし、ジェイは貴族出身。青白くとても当時のアメリカで暮らせるような男ではない。
彼は、旅の途中、盗賊に会うが、その危機をサイラスという男が助ける。
サイラスは旅の途中まで、金銭の報酬をもらえれば、ジェイの用心棒となると言う。
ジェイは迷わず、サイラスに金を払い、用心棒になってもらうことにするが......

開拓時代のアメリカである。自分の身は自分で守らなければならない。
ジェイは旅の途中で、様々な出来事の中、それを思い知らされる。
しかし、貴族の彼は、そう易々と人間性が変われるわけではない。
彼は、ジェイの手助けが必用なのだ。
驚いたのは、劇中後半のシーン。彼らの立ち寄った雑貨店が、男女二人組みの強盗に襲われる。
しかし、銃を持つのも初心者のようで、まして男は老人の域に達している。
結局、男は店主と相打ちしまうが、残った女性は金欲しさに、その場にいたサイラスに金を要求する。
だが、幸いにも、ジェイは彼女の背後にいて、存在に気づかれていなかった。
それを良いことに、ジェイは背後から女性を銃で撃つ。
私はここに驚かされた、背後から、それも女性を銃で撃つ。貴族の彼は、卑劣な方法で難を脱したのだ。
二人は店から幾つかの物を失敬して、表に出る。
するとそこには、強盗の娘、息子たちが待っている。なんとも切ないシーンだ。
そしてラスト、ジェイの愛している女性ローズは、賞金をかけられるような、おたずね者になっていた。
やがて彼女の家は、賞金稼ぎに取り囲まれ、壮絶なサバイバル合戦となる。
ジェイはやっとの思いで見つけ出したローズに会おうと、銃弾飛び交う中、やっとの思いで彼女の家までたどりつき、彼女に会える時がやってきた。
しかしジェイを待っていたものは、悲しい結末だった。

この作品は「生きる」事に関する、痛切なメッセージが込められている。
ジェイの愛したローズは、生きるためならジェイをも犠牲にする。
彼女は本当にジェイを愛していたのだろうか。
ジェイは、冒頭にも書いた「勝手な愛」を創造していたのだろう。
全く悲しい物語である。
しかし、ラストシーンには疑問が残った。
サイラスとローズが一緒にハッピーエンドを迎える。
物語の成り行きからして、このエンディングは悲し過ぎる。附に落ちない演出である。
しかし、なかなか良くできた作品であるので、観ることをお勧めする。
ただし、まだ作品は媒体化されていない、私は「ワウワウ」でこの作品を観た。
再放送の予定は、今のところないが、もし再放送されるようなことがあれば(ワウワうへの加入が前提になってしまうが)、観ていただきたい。

2015年、イギリス・ニュージーランド合作、カラー、89分、監督:ジョン・マクリーン