ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその233-殺人地帯U・S・A

2016年05月14日 | アメリカ映画
フィルムノアールの傑作。

フィルムノアール。1940年代以降、アメリカで製作されたモノクロを基本とした犯罪映画を指す。
当時、主にB級作品の多くはこのフィルムノアールの、要素を持っている。
今回紹介する映画は「殺人地帯U・S・A 」多くのフィルムノワールを手がけた「サミュエル・フラー」の監督作品だ。

ストーリーを紹介しておこう。

14歳の不良少年トリーは、ある日自分の父親が4人の男によって撲殺されるところを目撃する。
その男達が逃走するなか、一人だけトミーは男の顔を目撃する。
彼はその後、金庫破り等の犯罪を繰り返し、少年院や刑務所を転々とする。
ある刑務所に入った時、そこの病院に父親殺しの時目撃した男が入院していることを知る。
トミーは自ら、刑務所の病院勤務を名乗り出る。
そして彼の復讐が始まるのだが......

光と影を多用した映画作り。綺麗なモノクロが画面にそれを描ききっている。
そしてテンポの良い演出、そして脚本も見事である。
特に本編中盤で、復讐相手のボス達を、彼らを追っている警察検事と協力して、偽の警察文書を作り、仲たがいさせて、復讐を果たすシークエンスは、あの黒澤明監督の「用心棒」に似たところがあり、とても興味深い。
特に印象的なのは、冒頭父親が撲殺されるシーンである。
人物は見せずに、壁に映った影だけでそれを表現している。光と影の演出の見事さだ。
ラスト、トリーは果たして全ての復讐相手を見事始末する。
劇中、あるきっかけから、拾った女性とトリーは結婚の約束をしていた。
最後の復讐を終らせ、その場を後にするトリーには、恐怖の報酬が待っていた。
前述したとおり、監督はサミュエル・フラー。
当時はB級映画監督として、母国アメリカでは認められていなかったと言う。
しかし、後年ヨーロッパで再評価され、今では名匠の一人として認識されている。
映画の作りも良し、文句の付け所が殆ど無い作品である。
まだ観ていない方には、是非観ることをお勧めする。

1961年アメリカ製作、モノクロ、99分、監督:サミュエル・フラー