ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその214-舟を編む。

2016年02月22日 | 邦画
紙に言葉を編みこんでゆく。

辞書。
世の中には、様々な辞書がある。
学生時代には、辞書を用いる時が多々あるが、学校を卒業してしまうと疎遠になってしまう。
辞書は「言葉の泉」しかし、その厚さに閉口してしまい、利用する機会は減ってしまう。
今回紹介する映画は、この「辞書」を制作する物語「船を編む」である。
ストーリーを紹介しておこう。

大手出版社に属する「辞書制作部」は、本社の隣の鄙びたビルにある。
ベテラン編集者の荒木は、定年を期に会社を完全退職し、妻と二人で暮らすことを編集長松本に告げる。
しかし、松本は彼の後任は見つからないだろうと心配する。
荒木は責任を持って、自分が退職するまでに後任を見つけると公言、早速後任選びを始める。
そんな折、本社営業部に属する、馬締が候補に上がる。
彼は本が好きで、荒木が問いかけた難しい問題も平然と答える。
荒木は「馬締しか後任はいない」と思い、彼に辞書部への転属を勧める。
荒木の誘いに応じ、辞書部への転属をした馬締だったが......

馬締の転入後、辞書部は新しい辞書「大航海」を制作することになる。
途中、局長の中止命令が発令されそうになったが、それをなんとか乗り越え、膨大な時間をかけて辞書は完成する。
その期間、約十五年。約二十四万語を収録した「大航海」は完成する。
辞書を制作するプロセスが興味深かった。
新しい言葉を聞くと、その言葉をメモに書く(劇中でのメモの呼び名は失念してしまったが)、その意味と使用例を更に書いて行く。
今回登場した「大航海」と言う辞書は、常用語から最新の流行語に至るまで、出来る限りの言葉の意味、使い方を網羅したものを目指した。
映画自体は脚本が良く、最後までよく観させてくれたと思う。
映画の作りは、まあまあであると私は思う。
問題は俳優陣だろう。
主人公、馬締を演じた松田龍平がいただけない。
主人公の内面を演じきれていない、もっとナチュラルな演技をするべきではないだろうか。
その点、後半に登場する黒木華は良かった。
後半で、登場回数は少なかったが、しっかり彼女の個性を出していた。
本作は「脚本」に救われた映画ではないかと、私は思う。
監督の石井裕也の作品は、高評価だった「川の底からこんにちは」を私は観ているが、あの作品は私にとっては駄作だったと思っている。
その概念を捨てて、今回紹介した作品を観たつもりだが、やはり映画の作りとしては、あまり納得のゆくものではなかった。
二時間を超える長尺であるが、観はじめると素直に観終われる作品ではある。
興味を持った方は、観ることをお勧めする。

2013年、日本製作、カラー、133分、2013年キネ旬年間ベスト二位。