マックンのメモ日記

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IPOはどこに行った?!

2016-06-09 13:25:52 | 経済・金融・投資
• IPO市場の低迷

 新規株式公開(IPO)市場が低調です。以前のハイテクバブル崩壊を教訓に、シリコンバレーははるかに強固な企業を生み出しています。ウーバー・テクノロジーズやドロップボックス、エアビーアンドビーなどのビジネスモデルは本物であり、これらの企業は巨額の資金を集めています。こうしたいわゆる「ユニコーン」企業(企業評価額が10億ドル以上で非上場のベンチャー企業を指す)は今や147社に達していますが、過去7カ月においてシリコンバレーを本拠とする企業のIPOは1件も行われていません。

 IPOの低調はハイテク企業だけではありません。今年に入って5カ月間の米国での新規上場企業はわずか31社です。2015年には同期間に69社、2014年には115社が新規上場していました。IPO市場は一般的に、株式市場に非合理的な熱狂がある時期に好調であり、IPO市場を35年にわたって研究しているフロリダ大学のジェイ・リッター教授によると、現在のように株価指数が史上最高に近い状況でのIPO不振は前例のない事態です。

 銀行家、法律家、会計士は、2008~2009年の株式市場暴落による投資家の投機意欲減退、起業家にとっての新たな資金調達源の登場、そして規制の変更によって、非公開企業にとどまることが容易になったのと同時に、公開が困難になったことなどの複数の要因が合わさってIPO市場の低調につながっているとしています。

• 個人投資家の離反、新たな投資家

 IPOが低迷する一方、ベンチャーキャピタル(VC)は合併・買収(M&A)を通じて収益を上げています。VCが支援する企業のM&A件数は過去10年間において、四半期当たり約120件でほぼ一定しています。今年の最初の3カ月間において、VCが支援したM&A案件は112件でした。言い換えると、IPO市場の低迷は売り手によるものではなく、突如として選択眼の厳しくなった買い手によるものであると言えます。

 ルネサンス・キャピタルのプリンシパルであるキャスリーン・スミス氏は「大半の個人投資家とそのアドバイザーがインデックス商品に流れる中で、IPO市場はより機関投資家主導となっています。個人投資家は調達の容易な資金源だったのですが、もはや個人投資家はIPO市場にはおらず、戻ってくる可能性も低い」と述べています。このような状況の中でウーバー・テクノロジーズは非公開のまま成長しており、先週はサウジアラビアの政府系ファンドから35億ドルを調達しています。

 ミューチュアルファンドも成長機会を求めて非公開企業に投資しています。フィデリティ・インベストメンツ、T.ロウ・プライス、ウェリントン・マネジメントなどは全て、ユニコーン企業に対する大きな持ち分を保有しています。フィデリティのグローバル・エクイティ・キャピタル・マーケッツチームを率いるアンドリュー・ボイド氏はこの動きを長期的投資の前払い金であるとみており、時間がかかるとしてもこれらの企業は準備が整えば上場すると考えています。例えば、フィデリティはIPO前のフェイスブック(FB)に投資しました。ボイド氏は「上場への障害は大きくなったものの、メリットは小さくなっていない。以前よりも準備する必要があるだけだ」と述べています。

• 規制の変更による非公開の長期化

 IPOプロセスの参加者の大半は上場があまりに面倒になっており、可能な限り回避するのが最善の策だとしています。2012年に新規産業活性化法(JOBS法)を通過させた米国議会にも責任があります。この法制は小企業のIPOを容易にすることを意図したものであったのですが、実際にはIPO市場を失速させています。JOBS法の重要な規定の一つでは、企業は投資家が2000人に達するまでは公開企業に準じる情報開示を免れることになっており、しかもこの数には、報酬としてストックオプションを与えられた従業員の数は含まれなくなりました。以前はこの上限は500人であり、フェイスブックが尚早な上場を強いられた要因でもありました。同社は今でこそ好調ですが、上場直後はスマートフォンでの収益モデルが確立されておらず、株価は急落しました。昨年上場したモバイル決済サービス会社スクエア(SQ)、フィットネス関連のウエアラブル機器を手掛けるフィットビット(FIT)、企業向けファイル共有サービスを手掛けるボックス(BOX)、手作り品のマーケットプレイスを運営するエッツイ(ETSY)、ストレージ(記憶装置)メーカーのピュア・ストレージ(PSTG)なども株価の維持に苦しんでいます。

 プライスウォーターハウスクーパース(PwC)では、このようなシナリオを回避するためのコンサルティング業務を行っており、IPO準備の進捗状況の評価と、上場のためのコンサルティングを提供しています。同社の幹部でIPOサービス部門のリーダーであるマイク・グールド氏は「15年前には、数カ月以内に登録届出書を作成するというような電話を受けていましたが、最近では一般的に2~3年前に相談を受けるようになっており、プロセスは以前より調整されたものになった」と述べています。

 法律事務所のシンプソン・サッチャー&バートレットでIPO専門のパートナーであるジョッシュ・ボニー氏は金融危機とそれに対応して成立したサーベンス・オクスリー法(SOX法)がIPO市場に対するダブルパンチになったとしています。「ハイテクバブルの崩壊で新規上場のフローが途絶え、そしてSOX法によって上場企業のコスト負担が増大したのです。費用便益分析の結果、企業にとってはより大きくなるまで非公開を維持する方が有利になった」と同氏は述べています。

• 拡大する非公開企業株式取引

 ナスダック(NDAQ)は依然としてハイテク企業株の主力市場であり、IPOの主要な受益者でもありますが、非公開市場事業(ナスダック・プライベート・マーケット)も有しており、扱っている企業にはピンタレスト、ドキュサイン、シャザム、タンゴなどのユニコーン企業が含まれていて、2015年の取引金額は16億ドルに達しています。ナスダックでは昨年、非公開株のマーケットプレイスとして有名なセカンドマーケット・ソリューションズの買収で合意しており、非公開株式事業がさらに拡大することになります。ナスダックの最高経営責任者(CEO)であるロバート・グレイフェルド氏は、同事業が今後数年間で重要になるとしており、「長期にわたって非公開であり続けようと考える企業が、従業員とアーリーステージ投資家に流動性を提供できるようにすることは、当社の役割であると考えている。ニーズは存在する」と述べています。

 ナスダック・プライベート・マーケットの最近の報告書では、ナスダックの非公開取引所の典型的な企業は、設立後9年で従業員は440人、評価額は18億ドルとなっています。「これは従来であれば中型の公開企業の定義に近い。公開企業と非公開企業の間の区別はますますあいまいになりつつある」と同報告書は述べています。(ソースWSJ)