あとだしなしよ

Japanese text only..
落書きブログです。
報道記事の全引用は元記事消去への対応です。m(__)m

NHK木下恵介特集番組

2006年11月06日 | 木下恵介
NHKで木下監督の特集番組が放映されるようです。明日の夜10時ですので、お見逃し無く!

NHKスペシャル|ラストメッセージ「愛と怒りと 映画監督・木下惠介」

ラストメッセージ(全6集)
第3集「愛と怒りと 映画監督・木下惠介」

戦後日本を代表する映画監督、木下惠介。「家族の愛」「弱きもののささやかな幸せ」に生涯こだわり続けた木下は、「二十四の瞳」「喜びも悲しみも幾歳月」などの作品によって戦後の大衆の圧倒的な共感を得た。現在その名が語られることの少ない木下だが、1998年に亡くなった時、愛弟子であった山田太一は弔辞でこう述べている。「あるとき木下作品がみるみる輝き始め、今まで目を向けなかったことをいぶかしむ時代がきっと来ると思います」
木下の原点は愛情あふれる家族と過ごした少年時代にあり、今回、木下が家族を撮影した戦前のフィルムを発掘した。彼自身の体験は作品の随所に反映され、「弱きものが美しい」社会とは何かを語りかける。高度経済成長・核家族化の時代の流れの中で映画を撮れなくなった木下は「衝動殺人 息子よ」で家族愛を描いて復活、晩年の「この子を残して」は戦争を庶民の幸せを壊すものと訴えて白鳥の歌となった。常に「庶民=弱きもの」に寄り添っていたその格闘の人生は、弱いものが切り捨てられ強者の論理に流れがちな現代社会に疑問を投げかける。木下の言葉と残された映画作品を通して、今の日本人が失っているものは何か、共に生きる社会とは何かを問う。

案内役:国井雅比古アナウンサー

NHKのホームページの番組案内から引用させて頂きました。


女性の勝利

2006年11月06日 | 日本映画
女性の勝利
1946年、昭和21年 松竹大船
監督:溝口健二
出演:田中絹代、桑野通子、三浦光子、徳大寺伸
場所:フィルムセンター

田中絹代演じるの女弁護士の話。この時代の弁護士の服装はちょっと異様な感じである。
冒頭、終戦直後の焼け跡の道を田中絹代が歩くシーンがある。焼け野原をヒールを履いて歩く田中がミスマッチで、道沿いには店舗というものが無く、道ばたでそれこそミカン箱の上で卵を売ったりしていた。
田中には戦争中の体制に反対して牢獄に幽閉された恋人がいた。彼は田中が弁護士になる上での恩人の河野検事に牢屋にぶちこまれたのだが、出獄後は足腰が立たなくなっていた。見舞いに来た田中に希望をかたる彼…

ある日、田中の家に乳飲み子を抱えた女が肉を売りにきた。その女は田中の同級生であったが、それを思い出した母親が田中を呼ぶと、彼女は逃げてしまった。ある日、その彼女の夫が病気で死んでしまう。残された彼女は発作的に赤子を抱きしめ続けて子供を窒息死させてしまう。田中は生活に負けてしまったと彼女を非難し、彼女に自首を進め、彼女もそれに従う。

この事件の公判の検事として選ばれたのは河野検事。田中は彼女の弁護に立ち、彼と対決することになる。河野検事の妻は田中の実姉であるが、彼女は前時代的な夫にそれでも仕えている。彼は田中に自分の出世話を話したり、彼女を弁護士にした恩義を彼女に売り、暗に公判に負けろとほのめかす。彼女の姉も河野検事の女性軽視に次第に反発を感じるが、行動に移せない…

裁判当日、病床の男は危篤に。枕元に田中駆けつけたが、危篤の彼を残し裁判に向かい、河野検事と対決をする。精神錯乱などなく計画的に赤ん坊を殺したと主張する河野検事。田中弁護士は無罪だと主張する。『そもそもの原因は日本を戦争に巻き込み、日本を滅茶苦茶にした人達である。被告の夫も軍事工場で酷使されたのが原因で死亡した。その責任を追及せず、彼女を攻めるのは不当だ!』

第一回の公判の後、同僚から病床の彼の死亡を告げられた彼女。彼女の姉は河野検事との別居を決意する。様々な思いを胸に彼女は第二回の公判へと向かうのであった。



戦後1年目の作品で、戦時中の情報局の後は今度はGHQの監視下で作成されているので、どこまでが溝口監督の本意なのかは分らないが、戦争に対する女子供や社会的弱者への素直な謝罪ともとれた。うがった見方かもしれないが、GHQの極東裁判へ民意を作る目的もあったのだろうかとも思える…溝口監督が自由に映画を作られるようになるにはまだ数年かかるようだ…

必勝歌

2006年11月06日 | 日本映画
必勝歌
1945年、昭和20年 松竹/情報局
監督:溝口健二、清水宏、田坂具隆、マキノ正博
出演:佐野周二、大矢市次郎、沢村貞子、嶋田照夫、小杉勇、三井秀男、斎藤達雄、高田浩吉、沢村アキヲ、河村黎吉、高峰三枝子、轟夕起子、田中絹代、上原謙
場所:フィルムセンター

冒頭は南方戦線の佐野周二隊長が率いる一個小隊のシーンから。部下にふるさとを思い出せと言い、ボールを受けた兵隊さんが次々にその思い出を語っていく。全員で目をつむり、ふるさとの日本をを思い出す隊員たち~
雪国の農村のシーン。田舎の子供達も大きくなったら兵隊になる~などと話ている。その村で蒸気機関車が雪で立ち往生。村民全体で雪かきをし、機関車を助ける出す。(これが溝口監督の作品らしい)
隣組か消防団の監視員がコミカルに描かれる…兜を腰に着け、弁当を忘れないようにとか言いつつ、街の防火水を見回ったり、防空壕がちゃんと出来ているか~とかいいつつ、体重をかけ穴に落っこちるおじさん。。
満員電車で疲れてふらふらの兵隊さんをやさしく抱いてあげる見ず知らずの兵隊さん。。
竹細工の飛行機作りが大好きな少年は、空軍に志願する。その父親は立派なパイロットになって敵に体当たりしろ!とか笑顔で話す。息子と父親の話が決まって、朗らかに微笑むその母親。。。
赤十字の看護婦の話…負傷者を載せた船が敵軍の攻撃に遭い、看護婦が負傷者もろとも海に沈んだ。タールの海の底から看護婦達の清らかな歌声が聞こえてきた…という話を澱みなく絵物語のように話す。。。美化することの恐ろしさよ…
宴会で酒を飲む男達。靖国で会おう~とかご満悦で歌を歌う。
田舎の少年達が踊るミュージカル風の映像。
招集がかかった見合い相手の男性との結婚を予定通りに進めてくれと願う高峰三枝子さん…夫の足がなくなろうとも添い遂げますと語る。
などなど…
ラストは瞑想を終えた、佐野周二率いる小隊が作戦を遂行するために出撃して行く…

オールスターキャストで送る、終戦の年の戦いへの宣伝映画。冬場のシーンが多いので空襲前の撮影が多いようだが空襲のシーンも少しだけあった。公開は2月20日とある。各地での地上戦や空襲や原爆投下と地獄に向かう日本。"体当たり"という言葉が何回も何回も出てくるが、命を失うことへの現実感や惨たらしさが全く無く、娯楽映画を見ているみたいな感覚だった。やはり戦時中の作品は見ていて辛い。(眠い…)田中絹代が出ていたのだが、どんなシーンだったか思い出せず。

名刀美女丸

2006年11月06日 | 日本映画
名刀美女丸
1945年、昭和20年 松竹京都/情報局
監督:溝口健二
出演:花柳章太郎、伊志井寛、柳永二郎、大矢市次郎、山田五十鈴
場所:フィルムセンター

真面目な刀鍛冶、清音と山田五十鈴さんとの恋の物語。
刀鍛冶の清音が鍛えた刀を使ってくれた恩人が、主君の警護の最中に賊に襲われる。交戦中に清音の刀が折れてしまう。主君と恩人は無事だったが、恩人は武士の魂ともいえる刀が折れた為に糾弾され没落してしまう。最後は怨敵に殺されて命を落とす。その恩人の娘を山田五十鈴が演じる。娘は仇討ちに使う刀を作るよう、清音に依頼する。静音は兜をも斬れる剣を作ろうと相棒と必死に鍛冶仕事をするが何回やっても失敗する。気力も原料の鋼も尽きる最後の刀の作成でその思いが通じてか、父を殺された山田五十鈴の幻影とともについに打ち出された刀。その刀は遂に“エイヤー!コチン!”と兜をまっ二つにする。その刀で山田五十鈴とともに仇討ちを果たした。
一生刀鍛冶を続けて行くと誓う静音に、「私も側に置いてよ」と言う山田五十鈴のセリフで終。

敗戦の年にこれまた情報局の監視下で作られた映画だそうで、仇討ちの話であった。刀は兵器がシンボライズされたものであろうか。それを作る軍需産業も仕事に必死で打ち込み、戦死者の仇を討つのだと言いたいようだ。いくら溝口映画でも見ていてしんどかった。竹刀で静音の頭をコツンと叩いたりする山田五十鈴さんのコミカルな演技と、静音の純朴で少し情けない感じの役所が救いか。芸道もの刀鍛冶編といった感じなのか、謙虚な主人公は近松物語に少し似た感じに思えた。

宮本武蔵

2006年11月06日 | 日本映画
宮本武蔵
1944年、昭和19年、松竹京都/情報局
監督:溝口健二
出演:河原崎長十郎、中村翫右ヱ門、生島喜五郎、田中絹代
場所:フィルムセンター

戦時中の軍部の情報局の監視下の元に作られた作品。一般的な?武蔵と小次郎の話に仇討ち話が加わっていた。朱美やお通、又八は出てこないし、子供好きな側面も描かれず時代劇のヒーローという感じはまったくない。
冒頭の、吉岡と武蔵の小競り合いから一気に下がり松の決闘シーンになだれ込む。武蔵は野武士的というよりも剣豪といった風情で、父の新免無二ぽい雰囲気で描かれる。一乗寺の決闘シーンはどうしても内田吐夢版を連想してしまうが、溝口の長回しで、吉岡一門との壮絶なチャンバラシーンが見られるかと期待したが、ほんのさわりですぐに終わってしまった。
仇討ちを目指し武蔵に弟子入りをする姉弟の姉役には田中絹代。長い髪を後ろで束ねた髪型で登場。「仇討ちで武道を志すとは不純である」と弟子入りを断られるが結局、許され弟と一緒に打ち込み等の稽古に励む。
姉弟の助太刀に武蔵が入っていることを恐れた仇討ちの怨敵は小次郎に取り入る。小次郎は武蔵と試合をしたいが為に、挑発行為として弟を怨敵に殺させる。義太夫?を歌いながら姉弟に近づき殺め、殺害後も歌いながら去って行く彼らは不気味であった。
武蔵は巌流島へ。宿泊先では姉が武蔵の世話をしている。巌流島に向かうその朝に怨敵は武蔵を待ち伏せしていたが、あっさり武蔵に返り討ちにあう。「こいつらはもう一生不遇者であるが、とどめを刺すか」との武蔵の問いに姉は、このまま見逃すと答える。
巌流島に向かう船。浜辺に着くやいなや、決闘開始。ここからは良く知られるやりとりが繰り広げられた。勝負は一撃で武蔵の勝ち。武蔵の鉢巻がはらりと落ちる。倒れた小次郎の刀が武蔵の袴を弱々しく撫でると、袴が切れる…
決闘を終え海岸に着いた武蔵は姉と遭う。姉は仏の道に入ると言い、武蔵は小次郎との試合には仇討ちの雑念が入ったと悔いる。「そちを心の妻とする」と姉に告げ、武蔵は何処へと去って行く。

*

仏像を彫る武蔵と姉との長回しのシーンなどが印象的。仇討ちの話の武蔵を映画化したのは当時の戦局の反映し国民を鼓舞するためだろうか…日本は武士道とはかけ離れた観念化された勝ち目無い戦いを続け玉砕の道を歩んでしまった。