あとだしなしよ

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キューポラのある街

2006年11月22日 | 日本映画
キューポラのある街
1962年、昭和37年 日活
監督:浦山桐郎
原作:早船ちよ
脚本:今村昌平、浦山桐郎
出演:吉永小百合、東野英二郎、浜田光男
吉永小百合さん17歳の時の作品らしい。浜田光男が共演者だったのでいわゆる"青春&恋愛"ものかと思ったが、子供が主役の映画だった。とはいっても、子供向けではなく、社会派に属する映画だと感じた。吉永さんは進学を控えた中学生のリアルな少女の役。弟が伝書鳩に夢中なガキ大将のわんぱく小僧でもう一人の主役。荒川の上流の埼玉県川口市の鋳物と鉄鋼の街が舞台で、キューポラとは鉄の溶鉱炉のことらしい。彼らの家は長屋で、労災で足を悪くし初老でさらに失業中で飲んだくれてばかりいる昔気質の鋳物職人の東野英二郎のお父さんと母の杉山徳子さん(「渡る世間は鬼ばかり」の前田吟のお母さん役のかた)で、あかんぼうが生まれたばかりの正に火の車の家庭…「スーダラ節」が流れる川口の街で、子供を中心にまわりを描くと、当時の社会状況見えてくる…二人ともに在日コリアンのともだちがいて、現在まで引きずっている朝鮮問題が描かれる。帰国運動でホクセンに渡る為に新潟行きの列車に乗る彼らの家族と、日本に残る日本人の母親。北朝鮮の旗のもと民族の歌を歌いながら、駅に集まる人々。見送る人には学校の先生もいる。「今の生活より悪くなるわけねーや」といって母親と別れ、北朝鮮に渡る決心をする子分のハナタレの少年。ワルガキ団も解散…
進学費を稼ぐ為にパチンコ屋でバイトもしていた勉強家で頭の良い吉永さんは不安定な両親の生活状況も熟慮して

ひとりで十歩 進むより みんなで一歩 進むのが良いわ!

と言って自立した生活を目指し有名校への進学の道を捨て、就職し定時制高校への進学を決意するのでありました。経済的自立は大切だ…エライなあ。朝鮮、教育と労働問題と現在とほぼ同じ問題がテーマにありました。描かれている社会は、会社統合や労働組合の発達(労組は戦後から活発化)、所得倍増計画などが話に出て来て、高度成長直前の日本がみられる感じがした。
ちなみに帰国事業を始めた時の総理は安倍晋三のじいさまの岸信介だったそうです…

第36回(1962年度)キネマ旬報ベストテン 第2位