工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

砂漠を駆け抜けろ~タミヤのSASジープを作ってみました

2023年06月25日 | ジオラマあれこれ
 先日「あまりつくらないジャンルの模型」という話をしましたが、それはAFVのことです。いろいろあって5月、6月はちょっとした「ジープ祭り」になっていまして、タミヤ1/35のウィリスジープ(いずれご紹介します)と同じく1/35のSAS(イギリス軍の特殊部隊)仕様のジープを作っていました。

 SASのジープのキット、昔から知っており入手もしやすいキットです。いつかは作りたいなとは思っていましたがなかなか手が伸びず、キットを買ったのもコロナの緊急事態の前後だったように思います。キットは1974年発売で、ウィリスジープの旧キットをベースにしています。
 SASのジープについては、古今東西さまざまな作例が紹介されていて、今更説明の要もないくらいです。砂漠を長駆走破し、偵察、襲撃などを行うために特化した装備が特徴で、キットでもたくさん積まれた燃料と水のためのジェリカンをはじめとして、装備品をたっぷりセットしています。詳細な説明書にも「同じものは二台としてない」というくらい任務や個人の好みに合わせてバリエーションに富んでいたようで、私もいろいろ考えながら作ってみました。
 ロングセラーの好キットではありますが、やはり今の目で見ると・・・という箇所もあります。ジェリカンについては上部の取っ手がキットでは二本ですが、キットの箱絵などは三本に描いています。私もプラ材でもう一本追加しました。また、キャップについてもモールドをいったん削り、市販の丸パーツをつけました。


 ユーザーが「各自工夫の上」工作して仕上げるものもあります。荷台側のジェリカンのラックも、プラ材から作りました。荷物を車体に提げる際の肩紐や、水筒のストラップなども紙、プラ材など総動員しています。

フロントグリル近くにある復水器についても、箱絵ではいい感じに凹んでいますが、キットのパーツはへこみなどはありません。ピンバイスで表面を軽くさらい、丸い棒やすりでさらったあたりの周囲を広げてみました。もっと派手に凹ませてもいいのですが、私の腕ではこんなところです。ホースは1ミリプラ棒を曲げて作っています。

武装は箱絵と同じくビッカース機銃を搭載しました。荷台にはジェリカン以外にも弾薬をはじめさまざまな物資を積んでいますが、キットのパーツから賄っており、他のキットのものは使っていません(キットのパーツが豊富でたとえ使いたくても置く場所がない)。

礼儀正しくというか、整理整頓されて荷物が積まれていますが、戦闘中でとっ散らかっている状態ならともかく、比較的動きの少ない状況というところで、きちんと積んでいます。私の机の上よりよほど整理整頓ができています。
車体後方にはサンドチャンネルを取り付けてあります。

塗装については車体の基本色としてMr.カラー39番 ダークイエローで塗装していますが、タミヤ・アクリル塗料を中心に汚し塗装をかけているので、だいぶ印象が変わります。ジェリカンなどのパーツはタミヤ・アクリルのXF60 ダークイエローで塗装しました。ジープに乗る二人ですが、軍服の部分はカーキで、ターバンはバフで塗った後、ファレホのオフホワイトでハイライトをつけました。パーティングラインが残っており、取るのに難儀しました。ターバン姿やグリルを取り除いたジープのフロント部がこのキット(というかSASとその装備)の見せ場という感があり、ターバンを塗りながら「昔タミヤのカタログで見たあれを、自分が今塗っている」と妙な感慨にとらわれました。過酷な任務で体もドロドロ、という感じを出すために、肌の部分はオリーブドラブ系の色でフィルタリングしています。本当は顔のゴーグルで隠れる部分とそれ以外の箇所で色が大きく変わるのですが、出撃前の姿ということで、そこまでは再現していません。
ジープの横に立つ士官は、ウクライナ・ミニアート製の「BRITISH OFFICERS」というキットから持ってきました。

右手はポケットに入れ、左手にはタバコ(葉巻?)が握られているという姿で、曲者感のある風貌がなかなか絵になります。塗装指示では軍服はフラットブラウンということでしたが、もっとフラットアース側に振った色でもよかったかもしれません。タミヤの説明書にはコート姿の士官がジープの傍らに立っている写真が掲載されていますが、コート姿の士官もセットされていますので、こちらを再現することも可能です。
ジープと士官の舞台を再現すべくビネット風に地面を作ってみました。台座はハンズで売られていたもので、こういう小さな軍用車両などをジオラマ化した際にちょうどいい大きさなので使っています。水性のウレタンニスで塗り、よく乾かした後で地面を作っていきます。地面の凹凸はキッチンペーパーをちぎってそれらしく形にしたもので、石は鉄道模型の情景用のものです。砂漠部分に当初はタミヤの情景テクスチャーペイント・ライトサンドを塗布してみましたが、黄土色の砂浜、という感じになってしまい、イメージと違う気がしましたので、結局その上にアクリルガッシュで白っぽくトーンを落とした色で彩色しました。

かくして、この異色感あるキットが完成です。あまりにも有名なキットで、AFVを専門にされている方なら一度や二度は作られているのではないかと思います。普段こういったものを作らないモデラーが作るとこうなります、程度に見ていただけたらと思います。冒頭にも述べましたがこのキットを作る前に現行製品のタミヤのウィリスジープを作っておりまして、当たり前ですが現行製品の方が作りやすく、さらには精密にできているわけですが、昔のジープのキットもまじめなつくりと言いますか、基本に忠実な工作を求められつつも、ユーザーの「遊び」の要素も残されているように感じました。そのへんは旧製品のシュビムワーゲンでも感じたのですが、こういうところがタミヤのミリタリーミニチュアシリーズの良さで、それが今も生き続いているように感じます。今、この車輛を製品化すれば人形も細かな彫刻が施され、ターバンなどは別パーツにして、復水器もはじめから凹んだ状態でパーツ化するのではないでしょうか。ユーザーの創意工夫が必要なキットではありますが、その分工作を楽しむことができました。楽しく作れるか、というのも大事ですからね。

SASについてはその後もさまざまな戦争、紛争に投入されているほか、特殊作戦を遂行することもあります。元隊員だったアンディ・マクナブが記した湾岸戦争当時の手記「ブラボー・ツー・ゼロ」や「SAS戦闘員」についてはお読みになった方もいらっしゃるでしょう。特に後者は各地の地域紛争、特殊作戦に従事した際の話が生々しく語られています。


 

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