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工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

鉄道博物館へ 走るレストラン展を観てきました

2019年12月24日 | 鉄道・鉄道模型
 食堂車の記事もおかげさまで回を重ねております。3回くらいで止めようと思っていたのですが、皆様から思いのほか反響がありましたのと、書きたい内容が多いものですから、もう少しお付き合いください。
 今年は山陽鉄道が本邦初の食堂車を運行させてから120年ということで、大宮の鉄道博物館でも「走るレストラン 食堂車の物語」という企画展が開催されております(令和2年1月19日まで)。私も先日観てきました。
 これまで書物等で見たことのある資料も含め、明治から令和まで、食堂車の変遷が旧国鉄にとどまらず、私鉄等も含めて紹介されています。海外の鉄道における食堂車のはじまりについても資料が紹介され、日本で言えば幕末~明治期に欧米で食堂車が作られるようになったことが分かります。長距離運行、車輛の大型化も影響しているのでしょう。
 日本でも明治時代に食堂車がデビューしたわけですが、文学作品などにも食堂車が登場しており、本展覧会でも紹介されています。夏目漱石の「行人」には、官設鉄道の食堂車の光景や、南海鉄道の喫茶室が描かれているそうです。漱石の研究をされている方はたくさんいらっしゃるので、門外漢の私がどうこう言えないのですが、胃弱だったと言われる明治の文豪も食堂車を利用していたのでしょうか?
 会場内では各時代の特徴的な食堂車の内装のイラストや、調理器具としておなじみだった石炭レンジも展示されています。鉄道だけでなく鉄道連絡船、戦前の航空機の機内食についても触れられており、こちらも興味深かったです。それにしても冷蔵技術が今ほど発達していなかった時代、和食堂車などで「刺身」というメニューがありましたが、氷だけの冷蔵で鮮度を保てたのか大いに気になるところです。
 また、クリスマス時期限定の展示ではありましたが、昭和25年、昭和20年代後半の上野や仙台の営業所のクリスマス特別メニューが展示されていました。七面鳥などの料理が提供されていたようです。他にも米軍に接収された食堂車でクリスマスの飾り付けが施されている写真もありました。東北本線を走る食堂車でクリスマスメニューがあったということは、東海道でも同じようなサービスがあったのでしょうか。
 食堂車の案内チラシや戦後のビュッフェも含む食堂車のサーピスといった展示もあり、現在のクルーズトレインの食事、厨房の様子についてもJR東日本の「四季島」を例に映像を交えて紹介されており、なかなかお目にかかる機会のない車輛、列車ですので興味深く見ました。場内は撮影禁止ですが、図録がそれを補ってくれますので、興味のある方はぜひ図録も含めてご覧いただければと思います。自然災害などで遅延が生じた際に寝台特急カシオペアで提供された昼食(ご存知のとおりカシオペアの食堂車は通常、夕食と朝食のみの営業でした)のカレーライスの写真も掲載されています。これは言うなれば、食堂車の「裏メニュー」ですね。

 今回の展示に合わせて、近年開館したエリアの「ヒストリーステーション」でも食堂車に関する展示がありました。オリエント急行が日本で運行された際の夕食のメニュー、ピアノバー車のドリンクメニューなどが目をひきました。オリエント急行の話は昨年の今頃、当ブログで書きましたが、バー車のドリンクメニューを見たのは初めてで、その多彩さには驚かされました。

 さて、本展示会についてはもう一つコラボレーションした企画があります。本館2階の「トレインレストラン 日本食堂」にて、昭和13年の「洋食定食」というメニューが復刻され、提供されています。私も食べてみることにしました。洋食定食の内容ですが、2枚で約300グラムというボリュームある牛肉のステーキに「メントルテールバター」(メートルドテルバター)と呼ばれるバター、パセリ、レモン汁などを混ぜたソース、ニンジンのグラッセ、ジャガイモが付け合わせとなります。やはり当時のレシピで再現されたロールパンがつき、果物は冷凍ミカンが用意され、コーヒーが食後につきます。これまでに他の方も紹介されていますが、私なりの感想も記したいと思います。牛肉そのものはかなり胡椒がきかせてあり、しっかりと焼いてありました。メートルドテルバターの乗ったステーキ、というのは随分前に食べた覚えがありましたが、その時よりもバターの量が多く、味もこってりな感じです。和風おろしソースにお箸で切れるような柔らかい牛肉、というのとは対極かもしれません。ということでソースも含め肉に関しては全体に味がしっかりついているという感じがします。日本の西洋料理の範となったフランス料理ですが、その昔はバターやクリームを大量に使っており、素材を活かした料理が評価されるようになったのは戦後しばらく経ってからのことです。それを思うと胡椒をきかせてしっかり焼いた肉と「メントルテールバター」は日本の西洋料理としても「当時の味」だったのでしょう。また、ロールパンも柔らかく、これも日本のパンのレシピだと思いました。300グラムの肉、となりますと食堂車というより「い〇なりステーキ」な感じがしまして、年齢を重ねるとたくさん肉をいただくということがなく、食べきれるか心配でしたが、気が付いたら平らげておりました。
 食べているとちょうど展示されているC57の汽笛の吹鳴の時間とかさなり、大きな汽笛の音が聞こえてきました。あの時代にタイムスリップして当時の食堂車の乗客の気分を味わうことができました。クリスマスのごちそうには少し早かったのですが、美味しい食事を味わうことができました。ごちそうさまでした。
 みなさまも素敵なクリスマスをお過ごしください。

(見えにくいのですが肉は2枚です。肉の上にあるクリーム色の塊が「メントルテールバター」です。このほかにコーヒーがつきました)

 
 
 
 
 
 
 

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