ルーシー・アイレスパロウは 小型の自家用車を運転して、 いかめしい大きな鉄門をくぐった。 今はすっかり打ち棄てられていたが、 元は 番小屋 と覚しい小屋があり・・(中略) 長い、曲がりくねった道が、 こんもりとして暗い 石楠花の繁み を縫って、 屋敷まで続いていた。 ウィンザー城 を小さくしたような館が見えた時、 ルーシーはあっと息を吞んで、微かに喘いだ。 【A・クリスティー作「パディントン発4時50分」】 |
寒いとまでは行かないまでも、ヒンヤリとした朝を迎えました。
加えて今日は真珠色の空。この処の春らしい陽気とは一変です。
ただ、私の中では “火” がある事になぜか安心もして。
石油ストーブの上にお湯が湧き、時には煩(うるさ)く思える、
リズミカルな? その音も、妙に懐かしいような・・。
そう言えば、ストーブの上って便利です。
いつでもお湯が湧いていますから、お茶だってすぐに頂けます。
又、さつま芋をアルミホイルに包んで置いて置けば、
僅かな時間で焼芋と・・すっかり重宝しています。
“ここ数日間の手持無沙汰の感は、これだったのだわ”
~なんて確認した次第です。
さて、久し振りのアガサ・クリスティーは、「パディントン発4時50分」。
ちょっと前に読了していながら、今日までずれ込んでしまいました。
擦(す)れ違う列車の中で殺人事件を目撃するという、
まるでヒッチコックの 「裏窓」 を連想させる、ストーリー展開。
タイトルからは 「オリエント急行殺人事件」 に代表されるような
列車物と思われますが、最初だけ。
その舞台背景も上記の描写のような、
独特の雰囲気がありますから、嫌でも引き込まれてしまいますね。
のみならず、「クリスマスプディングの冒険」 のように
料理、お茶シーン等など・・満載ですから私なんて、もうお腹一杯。
この小説は、ミス・マープル物ですが、やはり女性が主役だからでしょうか。
料理、お茶、植物などの描写がポアロ物より多いような気がします。
そうそう肝心の犯人。
様々な登場人物の中で、“1番犯人らしくない者” を選んだつもりですが又々、外れ。
ミス・マープルの冴え渡った推理力には脱帽です。
最後に。ラザフォード邸 の本日の夕食メニューです。
たっぷりどうぞ! 但し、自己責任でどうぞ。
【注 : 「シラバブ」 → 牛乳、あるいはクリームに、
葡萄酒、林檎酒などを混ぜ、砂糖と香料を加えて泡立てて固まらせたもの】